スーダ辞典

スーダ辞典

『スーダ辞典』（ギリシア語: Σοῦδα, Souda）は、10世紀頃に東ローマ帝国で編纂された、百科事典の性格を併せ持つ辞書です。約3万語もの項目を収録し、古代から同時代までの歴史に関する情報を網羅しています。当時の東ローマ帝国の公用語であったギリシア語で記述されています。

辞典の題名である「スーダ」は、「砦」を意味する名詞に由来します。しかし、東ローマ帝国末期からルネサンス期を経て20世紀前半に至るまで、編纂者の人名に由来すると誤解され、「スイダス」（Σουίδας）という名称で伝えられてきました。

概要

『スーダ辞典』は、その収録項目の豊富さから、現代の西洋古典学や古代ギリシア研究において頻繁に参照される重要な資料です。デンマークの学者アダ・アドラーによって編纂された刊本は、全5巻、約2700ページにも及ぶ大著です（1928年）。2014年には、インターネット上で電子化が完了し、訳注も加えられ、よりアクセスしやすくなりました。

内容には誤りも含まれていますが、散逸してしまった文献からの引用が多く含まれているため、資料としての価値は非常に高いと言えます。項目の配列はアルファベット順ですが、同音異字が同じ箇所にまとめられているなど、若干の不規則性も見られます。

『スーダ辞典』の根幹をなすのは、豊富な人物項目です。これらの人物項目は、6世紀の伝記作家であるミレトスのヘシュキオスの著作に基づいていると考えられています。

成立

『スーダ辞典』は、10世紀のマケドニア朝統治下の東ローマ帝国で成立しました。当時、東ローマ帝国では、後世「マケドニア朝ルネサンス」と呼ばれる古代ギリシア文化の復興が推進されており、皇帝コンスタンティノス7世の主導のもと、国家事業として古代文献の収集・整理が行われていました。『スーダ辞典』は、このような文化的興隆の中で生まれたと考えられています。編纂者は特定されておらず、複数の無名の学者によって編纂されたと推測されています。

成立年代は、10世紀後半と推定されています。その根拠としては、以下の点が挙げられます。

12世紀のエウスタティオスの書物に『スーダ辞典』からの引用が見られること
当時の大主教ポリュエウクトス（在位956-970）に対する批評が含まれていること
アダムの項目で言及されている年代記が、ヨハネス1世ツィミスケスの死亡（975年）で終わっていること
バシレイオス2世とコンスタンティノス8世に関する記述があること

なお、11世紀のミカエル・プセルロスに関する記述も見られますが、これは後代に挿入されたものと考えられています。

関連項目

ビザンティン文化
マケドニア朝ルネサンス
百科事典

外部リンク

オンラインスーダ辞典 （英語）

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