バシレイオス2世

バシレイオス2世（958年 - 1025年）は、東ローマ帝国マケドニア王朝の皇帝であり、その治世は帝国の最盛期を築いたことで知られています。彼は「ブルガリア人殺し」を意味する「ブルガロクトノス」という異名を持ち、その軍事的な手腕と内政における改革で、帝国を強大な存在へと導きました。幼少期は共同皇帝として過ごしましたが、実権を握るまでには時間を要しました。しかし、成人して正帝となると、その卓越した才能を発揮し、数々の困難を乗り越えていきました。

即位までの道のり

バシレイオス2世は、ロマノス2世の長男として生まれ、960年に共同皇帝となりました。父の死後、様々な権力者によって実権を握れない日々が続きましたが、976年にようやく正帝として即位しました。即位当初は、大叔父のバシレイオス・レカペノスの影響下におかれ、また、バルダス・スクレロスの反乱や第一次ブルガリア帝国の侵攻に悩まされました。しかし、キエフ公国のウラジーミル1世の援軍を得て、バルダス・フォカスの反乱を鎮圧し、実権を掌握することに成功しました。

軍事的功績

バシレイオス2世の最大の功績は、第一次ブルガリア帝国を滅ぼしたことです。彼は、23年間にも及ぶブルガリア戦役を指揮し、1014年のクレディオンの戦いで決定的な勝利を収めました。この戦いでは、捕虜となったブルガリア兵を虐殺したという逸話が残っており、その残虐性から「ブルガロクトノス」という異名が付けられました。しかし、征服後の政策は寛容であり、帝国の他地域とは異なる税制を許可するなど、支配下に入った地域を安定させることに努めました。ブルガリアの征服後、シリアやアルメニアにも遠征し、これらの地域を帝国領に組み入れました。彼の治世下、帝国はドナウ川からクレタ島、シリア、そして南イタリアにまで及ぶ広大な領土を支配しました。また、彼は戦場において勝利するまで決して帰還しなかったと言われており、その徹底した姿勢は、多くの人々に畏敬の念を抱かせました。

内政面での改革

バシレイオス2世は、軍事的な功績だけでなく、内政面でも優れた手腕を発揮しました。彼は、大土地所有者による中小農民の土地収奪を抑制し、農民の保護に力を注ぎました。また、贅沢を慎み、財政支出を抑制することで、帝国の財政を健全化させました。しかし、一方で、緊縮財政は経済発展を抑制する要因にもなりました。彼の専制的な政治は、貴族の力を弱め、皇帝の権威を確立させることに繋がりました。また、キエフ大公ウラジーミル1世との縁組によって、キエフ公国をキリスト教化させることにも成功し、正教会の勢力を拡大しました。

その死と遺産

1025年、バシレイオス2世はシチリア遠征の準備中に急逝しました。結婚しなかったため、後継者は弟のコンスタンティノス8世となりましたが、彼は無能であったため、バシレイオス2世の死と共に帝国の絶頂期は終わりを告げました。しかし、彼の築き上げた帝国は、その後数十年にわたって繁栄を続けました。バシレイオス2世は、東ローマ帝国の歴史において最も偉大な皇帝の一人として記憶されており、その軍事的才能と内政手腕は、今日でも高く評価されています。彼の生涯は、帝国の拡大と安定、そしてその後の衰退へと続く、複雑な歴史の一幕を象徴しています。

バシレイオス2世は、身長は低かったものの、姿勢が良く、乗馬姿は印象的であったと伝えられています。また、髭を触る癖や早口で話す癖があったとも言われています。彼の業績は、東ローマ帝国の歴史において、特別な地位を占めています。

もう一度検索