スーパーサックス

スーパーサックス（Supersax）

スーパーサックスは、サックス奏者メッド・フローリーとベーシストのバディ・クラークを中心に、1972年にアメリカ合衆国で組織されたジャズ・アンサンブルです。このグループは、ビバップの巨人であるサックス奏者チャーリー・パーカーへのオマージュとして誕生しました。

その音楽性は極めてユニークで、パーカーの残した即興演奏を緻密に分析し、サックスセクションのための多声的なハーモニーアレンジとして再構築して演奏することを主としていました。編成は、2本のアルトサックス、2本のテナーサックス、1本のバリトンサックスから成るサックスセクションを核に、ピアノ、ベース、ドラムのリズムセクションが加わり、さらに時折トロンボーンやトランペットといった金管楽器奏者も参加しました。

このアンサンブルのサウンドの特徴は、メッド・フローリーが手がけた精巧なアレンジにあります。パーカーの瞬間のひらめきであったソロラインは、フローリーの手によって複雑でありながらも流れるようなハーモニーとして編み直され、サックスセクション全体で演奏されました。そのため、公式にリリースされたレコーディングにおいては、アレンジが細部まで決められており、個々の奏者が自由に即興する機会はほとんどありませんでした。しかしながら、ライブパフォーマンスでは、メンバーがフィーチャーされるソロ演奏が頻繁に行われていたとされています。

グループの活動には、数多くの著名なミュージシャンが参加しました。特にブラス奏者としては、トランペットのコンテ・カンドリや、トロンボーンのフランク・ロソリーノ、カール・フォンタナらが録音に名を連ねています。また、クールジャズを代表するサックス奏者の一人であるウォーン・マーシュも初期のメンバーでしたが、前述のアレンジの特性から、公式録音ではソロを披露する機会は限られていたようです。一方で、同じくサックス奏者のリー・コニッツは、マーシュがスーパーサックスでソロを演奏している海賊版のテープが存在すると述べています。

スーパーサックスは、その革新的なコンセプトと高い演奏技術によって、ジャズ界で注目を集めました。1974年には、彼らはグラミー賞において「グループによるベスト・ジャズ・パフォーマンス」を受賞するという栄誉に輝いています。さらに、1983年に録音されたアルバム『スーパーサックス&L.A.ヴォイセス - L.A.』では、共演したL.A.ヴォイセスが「ベスト・ジャズ・ボーカル・パフォーマンス - デュオ・オア・グループ」にノミネートされ、一部の作品がグラミー賞にノミネートされるなど、高い評価を得ました。このアルバムでは、リーダーのメッド・フローリー自身がボーカルアレンジも担当しています。

ディスコグラフィには、『スーパーサックス・プレイズ・バード』(1973年)や『ソルト・ピーナッツ』(1974年)といった初期の代表作をはじめ、ストリングスとの共演盤やL.A.ヴォイセスとのコラボレーション作品など、多岐にわたるアルバムがあります。チャーリー・パーカーの遺した偉大な音楽遺産に新たな光を当てたスーパーサックスは、ジャズアレンジの可能性を示したユニークな存在として、歴史にその名を刻んでいます。

主なアルバム

『スーパーサックス・プレイズ・バード』(1973年)
『ソルト・ピーナッツ』(1974年)
『スーパーサックス・プレイズ・バード・ウィズ・ストリングス』(1975年)
『チェイシン・ザ・バード』(1977年)
『ダイナマイト!』(1979年)
『スーパーサックス&L.A.ヴォイセス - L.A.』(1983年)
『スーパーサックス&L.A.ヴォイセス - Vol.2』(1984年)
『スーパーサックス&L.A.ヴォイセス - Vol.3』(1986年)
『ストーン・バード』(1988年)
『Live in '75: The Japanese Tour』(1998年)
* 『Live in '75: The Japanese Tour Vol. 2』(1999年)

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