スーパーピアノレッスン

『スーパーピアノレッスン』は、NHK教育テレビジョン（現Eテレ）で2005年度から2006年度にかけて本放送されたクラシック音楽の教育番組シリーズです。

火曜日の19時台に放送され、国際的に活躍する著名なピアニストたちが講師として登場。国内外から集まった、音楽大学などで専門課程を修了し、プロのピアニストを目指す若手演奏家たちに、公開形式で高度なレッスンを行う様子が描かれました。番組のオープニングタイトルでは、その名の頭文字である「SPL（Super Piano Lesson）」と表示される印象的な演出が見られました。

この番組は、かつてNHKで約20年間にわたり放送された『ピアノのおけいこ』の後継とも位置づけられます。しかし、『ピアノのおけいこ』が主に国内の中高生を対象とし、日本人ピアニストによる基礎的な指導を中心としていたのに対し、『スーパーピアノレッスン』は対象をより専門的なレベルにある若手ピアニストに絞り、講師も世界的な巨匠を迎えている点で大きく異なります。そのレッスン内容は、単なる技術的な指導に留まらず、楽曲の背景にある作曲家の意図や作品の深い精神性にまで踏み込む、まさに「スーパー」と冠するにふさわしい極めて高度な音楽的探求が繰り広げられました。取り上げられた楽曲も多岐にわたり、ハイドンなどの古典派から、ラヴェルやプロコフィエフといった近現代の作品まで、幅広い時代のピアノ作品が扱われました。番組の内容に合わせたテキストも、NHK出版から販売されていました。

本放送終了後も、2007年以降、土曜日の午後など様々な時間帯で繰り返し再放送が行われ、多くの音楽ファンに親しまれました。特に、2008年には新たなシリーズとしてマリア・ジョアン・ピレシュによるレッスンが放送されるなど、人気に応じた展開も見られました。

番組に登場した主な講師とその担当分野、そして各期で取り上げられた楽曲は以下の通りです。

第1期（2005年4月～7月）では、フィリップ・アントルモンがモーツァルトのソナタや変奏曲、ロンドなどを指導しました。

第2期（2005年8月～11月）では、ジャン＝マルク・ルイサダがショパンに焦点を当て、華麗なる大円舞曲、スケルツォ第2番、マズルカ、ピアノ協奏曲第1番（第1楽章）、ノクターン、幻想曲といった幅広いジャンルの作品を取り上げました。

第3期（2005年12月～2006年3月）は「大曲に挑む」と題され、アレクサンドル・トラーゼがハイドン、ベートーヴェン、プロコフィエフ、チャイコフスキーといった作曲家の大規模な作品を扱いました。

第4期（2006年4月～7月）は「フランス音楽の光彩」として、ミシェル・ベロフがドビュッシー、ラヴェル、フォーレ、サティ、メシアンといったフランス近代音楽の代表作を指導しました。

第5期（2006年8月～11月）では、ミシェル・ダルベルトがリスト、シューベルト、シューマンといったロマン派の重要な作品、特にシューベルトのピアノ・ソナタ第21番やリストのピアノ・ソナタ ロ短調などに深く切り込みました。

第6期（2008年8月～12月）は「巨匠ピレシュのワークショップ」と題され、マリア・ジョアン・ピレシュが登場。シューマンやスカルラッティ、ショパン、グリーグ、モーツァルト、ベートーヴェンといった多様な時代の作品を指導しました。

第7期（2008年12月～2009年3月）では、アンドラーシュ・シフがベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲に焦点を当て、若手奏者と共に作品の真髄に迫りました。

そして、第8期（2009年12月～2010年3月）では、フセイン・セルメットがリストのソナタ、ムソルグスキーの展覧会の絵、ベートーヴェンのソナタ、ブラームス、メンデルスゾーン、プーランクの作品など、幅広いレパートリーのレッスンを行いました。

これらの各シリーズを通じて、『スーパーピアノレッスン』は、単なる技術指南にとどまらない、音楽の精神や解釈の奥深さを伝える貴重な機会を視聴者に提供しました。プロを目指す若手ピアニストたちの真摯な学びの姿勢と、巨匠たちの示唆に富む指導が、多くのクラシック音楽愛好家やピアノ学習者に感銘を与えた番組と言えるでしょう。

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