ズアオホオジロ

分類と名称

ズアオホオジロ（学名：Emberiza hortulana）は、鳥綱スズメ目に属する鳥類です。分類学上はホオジロ科ホオジロ属に位置づけられています。その和名「ズアオホオジロ」は、成鳥のオスに見られる特徴的な青灰色の頭部に由来しています。英名では "Ortolan Bunting" と呼ばれ、この名前は古フランス語で庭師を意味する "hortolanus" に由来すると言われています。これは、かつてヨーロッパで食用鳥として飼育されていた歴史と関連があると考えられています。

分布と生息地

本種は主に旧北区とエチオピア区、特にヨーロッパ大陸の広い範囲、西アジア、中央アジアの一部で繁殖します。具体的な繁殖地は、スカンジナビア南部からイベリア半島、東はモンゴル西部や中国北西部まで分布しています。越冬地は主にアフリカ大陸の北東部やサヘル地域、アラビア半島南部などです。

ズアオホオジロは開けた環境を好み、農耕地、果樹園、ブドウ畑、牧草地、疎林、低木のある草原などで見られます。標高の高い山地よりも、比較的低い場所を好む傾向があります。

日本では定期的な渡来は確認されておらず、ごく稀に記録される「迷鳥」とされています。本来の生息域から大きく離れて飛来した個体が観察されることがある程度で、国内で継続的に見られる鳥ではありません。

形態

ズアオホオジロは全長およそ16センチメートルから17センチメートル程度の小型の鳥です。オスとメスで羽の色合いに違い（性的二形）が見られます。

成鳥のオスは、名前の通り頭部と喉が特徴的な青灰色をしています。この部分の色合いは個体によって濃淡があります。胸部から腹部にかけては黄色がかった褐色やピンクがかった色で、しばしば縦縞が入ります。背中や翼は褐色で黒っぽい縦縞があります。嘴はピンク色をしており、目の周囲には淡いリングが見られることがあります。

メスや若鳥はオスに比べて全体的に地味な色合いをしています。頭部の青灰色は薄く、しばしば褐色がかった縦縞が入り、喉も淡い色です。胸や腹の縦縞はオスよりも明瞭な傾向があります。嘴の色はオスと同様にピンク色です。

生態

ズアオホオジロは主に地上で採食します。食性は種子食傾向が強く、様々な草の種子を主食としますが、繁殖期には昆虫やミミズなどの小動物も捕食します。地面を歩きながら、あるいは短い距離をホバリングしながら餌を探します。

繁殖期は春から夏にかけてで、通常、一年間に一度繁殖します。巣は地上や低木の根元、草むらの中などに作られます。枯れ草や根などを用いて椀状の巣を作り、内側は細い繊維や動物の毛などで裏打ちされます。一度の産卵数は3個から5個程度で、卵の色は白っぽい地色に褐色や紫色の斑点があります。抱卵期間は約11日から13日間で、雌雄交代で行われることもありますが、メスが主体となることが多いです。雛は孵化後、約10日から12日間で巣立ちます。

鳴き声は特徴的で、比較的ゆっくりとしたテンポで、澄んだ美しいメロディーを持つさえずりを発します。危険を感じた際には、「チィッ」や「ジッ」といった地鳴きを発することがあります。

渡り鳥であり、繁殖地から越冬地へ、またはその逆へと長距離を移動します。渡りの際には、単独で移動することもあれば、小さな群れを形成することもあります。

保全状況

ズアオホオジロはかつて、その肉が美味とされることからヨーロッパなどで食用として大量に捕獲され、個体数が大きく減少しました。特にフランスなどでは伝統的に高級食材とされていましたが、違法な捕獲や密輸が問題となり、現在では多くの国で保護の対象となっています。国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、個体数の減少傾向が続いていることから、比較的保全上の懸念が高い「準絶滅危惧（Near Threatened）」に指定されています。生息環境の劣化や農薬の使用なども、本種の個体数に影響を与えている要因と考えられています。

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