ホオジロ属

ホオジロ属（Emberiza）

*ホオジロ属（学名：Emberiza Linnaeus, 1758）は、スズメ目に属するホオジロ科の鳥類グループの一つです。この科を代表する模式属として知られており、模式種はキアオジが指定されています。

分布

ホオジロ属の鳥たちは、非常に広範囲に生息しています。アフリカ大陸、ユーラシア大陸、インドネシア、そして日本の各地で見られます。様々な環境に適応した多くの種が存在しますが、国際自然保護連合（IUCN）が作成するレッドリストには、危機的な状況にあるとして多くの種が掲載されています。日本国内においても、環境省や各都道府県のレッドリストに記載されている種が複数確認されています。

形態

ホオジロ属の鳥類の一般的な特徴として、全身が褐色系の羽毛で覆われ、そこに黒っぽい縦縞模様が見られる種が多いことが挙げられます。これは周囲の環境に溶け込むのに役立っていると考えられます。特に繁殖期を迎える時期には、オスの頭部の色彩が鮮やかになったり、特徴的な斑紋が現れたりする種が多く、性別や季節による外見の変化が観察できます。

生態

食性は、主に植物の種子を中心とした植物食傾向の強い雑食性です。種子を好んで食べますが、昆虫類も重要な食料源として利用する種もいます。餌を探す際は、主に地面の上を歩きながらついばむ姿がよく見られます。繁殖期に生まれた雛には、成長のために栄養価の高い昆虫類を与えることが知られています。繁殖は卵を産むことによって行われます。

繁殖期になると、オスは自分の縄張りを持ち、その範囲内で活動します。求愛行動として、オスは樹木などの高い場所でさえずり、メスが近づいてくると、追いかけるように飛ぶことで求愛の意思を示します。巣は地面の上や、茂みの中に作られることが一般的で、枯れ草などを材料に皿状や深めのお椀状の形に丁寧に作られ、そこで卵が孵化されるのを待ちます。

分類と主な種

ホオジロ属には非常に多くの種が含まれており、その多様性は生息地の広さを反映しています。世界中に分布する主な種には以下のようなものが含まれます。（一部抜粋）

*コシアカホオジロ（Emberiza affinis）：アフリカ西部・中部・東部に分布。
*シマアオジ（Emberiza aureola）：ユーラシア大陸北部から中部にかけて分布し、かつては日本でも見られましたが、近年激減しています。
*チャキンチョウ（Emberiza bruniceps）：ユーラシア大陸南中部に分布。
*キマユホオジロ（Emberiza chrysophrys）：ユーラシア大陸北中部から北東部にかけて分布。
*ホオジロ（Emberiza cioides）：ユーラシア大陸東部に分布し、日本でも最も一般的なホオジロ属の一つです。
*キアオジ（Emberiza citrinella）：ユーラシア大陸西部から中部にかけて分布。
*ミヤマホオジロ（Emberiza elegans）：ユーラシア大陸東部に分布し、日本では冬鳥として見られます。
*ホオアカ（Emberiza fucata）：ユーラシア大陸中部から東部にかけて分布し、日本でも広く繁殖しています。
*シラガホオジロ（Emberiza leucocephalos）：主にユーラシア大陸に分布。
*コホオアカ（Emberiza pusilla）：ユーラシア大陸北部に分布。
*カシラダカ（Emberiza rustica）：ユーラシア大陸に広く分布し、日本では冬鳥として多数飛来します。
*オオジュリン（Emberiza schoeniclus）：ユーラシア大陸に広く分布。
*アオジ（Emberiza spodocephala）：ユーラシア大陸東部に分布し、日本でもよく見られます。
*ノジコ（Emberiza sulphurata）：日本と韓国に分布する固有性の高い種です。
*クロジ（Emberiza variabilis）：ユーラシア大陸東部に分布。
*コジュリン（Emberiza yessoensis）*：ユーラシア大陸東部に分布し、日本では葦原などに生息します。

日本においては、ホオジロ、カシラダカ、アオジなどが比較的容易に観察できる一方で、コホオアカ、シマアオジ、ノジコなどの種は数が少なかったり、限られた環境に生息していたりするため、観察が難しい希少な存在となっています。

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