セアト・アローサ

セアト・アローサ：スペインが生んだコンパクトカー

セアト・アローサは、スペインの自動車メーカー、セアトが1997年から2004年まで製造・販売していたシティーカーです。1997年3月、ジュネーブモーターショーでデビューを飾り、セアト・マルベーリャの後継車として市場に投入されました。デザインは、ブガッティ・ヴェイロンなどでも知られる著名なデザイナー、Jozef Kabaňの手によるものです。

アローサは、4人乗り3ドアハッチバックというシンプルな構成で、コンパクトなボディながら実用的な空間を提供していました。そのベースとなったのは、フォルクスワーゲン・イビサやポロにも使われていたA03プラットフォームを短縮したA00プラットフォームです。姉妹車として知られるフォルクスワーゲン・ルポも、同じプラットフォームを採用していました。当初はドイツのフォルクスワーゲンの工場で生産されていましたが、1998年5月からはスペイン・マルトレイのセアト工場に移管されました。興味深いことに、チェコのシュコダもアローサの姉妹車を導入する計画を1998年まで立てていましたが、実現には至りませんでした。

2000年10月には、パリモーターショーでマイナーチェンジモデルが発表されました。このマイナーチェンジでは、エクステリアデザインの変更だけでなく、インテリア、特にダッシュボードのデザインも刷新され、より洗練された雰囲気となりました。しかし、2004年6月には生産・販売が終了。その後、セアトは同クラスの車種を長らくラインナップせず、後継車となるセアト・ミーが発売されるのは2012年1月まで待たなければなりませんでした。

車名の『アローサ (AROSA)』は、スペイン北西部のガリシア州にある都市、ビラガルシーア・デ・アロウサ (Vilagarcía de Arousa) に由来しています。この地域らしさを感じさせるネーミングが、アローサの個性の一つと言えるでしょう。

搭載エンジンは、ガソリンとディーゼルが用意されました。ガソリンエンジンは、1.0L、1.4Lの直列4気筒がラインナップ。1.4Lは、8バルブSOHCと16バルブDOHCの2種類が用意され、パワーと燃費のバランスに配慮した選択肢が用意されていました。ディーゼルエンジンは1.2Lと1.4Lの直列3気筒TDI、そして1.7Lの直列4気筒SDIが用意されました。これら全てのエンジンには5速マニュアルトランスミッションが組み合わされ、1.4L 44kWモデルには4速オートマチックトランスミッションがオプションで設定されていました。

セアト・アローサは、コンパクトなボディと多様なエンジンバリエーション、そしてスペインらしいネーミングが特徴のシティーカーでした。その短いながらも個性的な歴史は、セアトの歴史の中でも重要な一ページを刻んでいます。フォルクスワーゲン・ルポとの姉妹車関係や、後継車が登場するまでの空白期間なども含め、セアトの歴史を理解する上で欠かせないモデルと言えるでしょう。

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