ブガッティ・ヴェイロン

ブガッティ・ヴェイロン16.4：伝説のハイパーカー

ブガッティ・ヴェイロン16.4は、2005年から2015年にかけてブガッティ・オトモビルによって製造された、伝説的なハイパーカーです。新生ブガッティブランドとしてフォルクスワーゲングループが送り出した最初の市販車であり、その圧倒的な性能と希少性から、自動車史に燦然と輝く存在となりました。

誕生の経緯と開発

ヴェイロンの名は、ブガッティのエンジニアであり、1939年のル・マン24時間レース優勝者でもあるピエール・ヴェイロンに由来します。開発は、1999年のフランクフルトモーターショーで発表されたコンセプトカー「EB18/3 シロン」をベースに進められ、その後、東京モーターショーで「EB18/4 ヴェイロン」としてコンセプトモデルが登場しました。

搭載エンジンは、当初W18気筒が検討されましたが、最終的にはW16気筒4ターボへと変更されました。この変更は、冷却システムの複雑化、エンジンの重量増大、排熱の問題など、多くの技術的課題を克服する必要があったためです。最高出力1001馬力、最高速度407km/hという驚異的なスペックを実現するために、開発陣は並々ならぬ努力を注ぎ込みました。

しかし、その代償として、ヴェイロンは世界でも類を見ないほどの燃費の悪さという側面も持ち合わせています。高速走行時の燃費はわずか6.38km/Lという数字が示す通り、その性能は並外れたものでした。

ギネス世界記録と最高速

2010年、ヴェイロン16.4 スーパースポーツは、最高速チャレンジで平均時速431.072km/hを記録し、ギネス世界記録に認定されました。しかし、速度リミッターを解除した状態での計測だったため、一時的に記録は取り消されました。その後、複数の専門家の協議を経て、速度リミッター解除が基本性能に影響を与えないと判断され、記録は再び認定されました。

圧倒的な性能とメカニズム

ヴェイロンの心臓部は、排気量8.0LのW16気筒4ターボエンジンです。フォルクスワーゲン・パサートに搭載されるW8エンジンの組み合わせから生まれたこのエンジンは、最高出力1001PSを発生させます。冷却システムには50Lの冷却水と23Lのエンジンオイルを必要とするなど、その規模は巨大です。

7速DSGトランスミッションと組み合わさり、0-100km/h加速2.5秒、0-200km/h加速7.5秒という驚異的な加速性能を実現しています。最高速度407km/hに達するには11.5kmの直線が必要とされ、その際の燃費は0.8km/L、燃料タンク容量は100Lで12分間しか走行できないなど、その性能は極限まで追求されていました。

洗練されたボディと空力性能

カーボンモノコックボディは、ダラーラが製造を担当しました。高速走行時の空力特性を最適化するため、車高とリアウィングの高さを3段階で調整可能。最高速度チャレンジ時は、専用のキーを使用して車高を最低位置まで下げ、リアウィングの角度を最小限にする必要がありました。タイヤはミシュラン社製のPAXランフラットタイヤで、1セット25,000ドルという高価なものでした。

販売と特別仕様車

ヴェイロンは、300台（後にオープンモデル150台追加）の限定生産で、世界中で販売されました。日本への割り当ては15台でしたが、需要の高まりから、予定台数を超える販売も検討されたほどでした。価格は1億6300万円から始まり、価格は上昇し続けました。

購入には、ブガッティ本社の厳しい審査があり、オーナー候補はフランス・モールスハイムの本社に招待され、車両仕様を決定しました。

また、ピュール・サン、Fbg par Hermès、サン・ノアー、ブルー・サントネールなど、数々の特別仕様車が製造されました。それぞれが個性的なデザインと希少性から、コレクターズアイテムとして高い価値を誇ります。スーパースポーツやグランスポーツといった派生モデルも存在し、それぞれのモデルが進化を遂げてきました。

ヴェイロンの遺産

ヴェイロンは、単なる高性能車ではなく、ブガッティというブランドの復活と、ハイパーカー市場の新たな地平を切り開いた象徴的な存在です。その技術的挑戦と、限定生産という希少性は、多くの自動車ファンを魅了し続けています。その後のブガッティ・シロンへと受け継がれる技術的遺産は、現代の自動車技術に多大な影響を与え続けています。現在では、中古車市場でも非常に高値で取引されており、その価値はますます高まっています。

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