セイクレッド・ラヴ

スティング『セイクレッド・ラヴ』：愛と音楽の融合

『セイクレッド・ラヴ』（Sacred Love）は、イギリスのミュージシャン、スティングが2003年に発表した7作目のスタジオ・アルバムです。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件に強い衝撃を受けたスティングが、「愛」というテーマを深く掘り下げ、再定義しようと試みた作品として知られています。

制作背景と音楽性

スティングは本作について、「『愛』という言葉を再定義してみたかった。ポップ・ミュージックでは、『愛』は甘ったるくなりがちだが、『愛』とは攻撃的で暴力的な感情でもある」と語っています。この言葉が示すように、アルバム全体を通して、愛の多面性が追求されています。

音楽的には、フラメンコ・ギタリストのビセンテ・アミーゴや、シタール奏者のアヌーシュカ・シャンカルといった、ワールドミュージック界の著名なミュージシャンが参加している点が特徴的です。これにより、アルバムに独特のエキゾチックな響きがもたらされています。

スティングは2001年にメアリー・J. ブライジと自身の代表曲「セット・ゼム・フリー」をデュエットした際、彼女の歌声に感銘を受け、本作のためにデュエット曲「ホェンエヴァー・アイ・セイ・ユア・ネーム」を書き下ろしました。この曲は、アルバムのハイライトの一つとなっています。

ボーナス・トラックの「ムーン・オーヴァー・バーボン・ストリート（CORNELIUS MIX）」は、アルバム『ブルー・タートルの夢』収録曲をパリで再録音し、コーネリアスがミックスを手掛けたリメイクで、日本のテレビドラマ『愛するために愛されたい』に提供されました。

リリースと反響

アルバムのリリースに先駆け、スティングは2003年5月にロサンゼルス公演で収録曲の大部分を披露し、その模様は映像作品『インサイド〜ザ・ソングス・オブ・セイクレッド・ラヴ』として発表されました。

『セイクレッド・ラヴ』は、イタリアのアルバム・チャートで2週連続1位を獲得する大ヒットとなりました。アメリカでは、Billboard 200で初登場3位を記録し、合計27週にわたってトップ200にランクイン。2004年1月にはRIAAによってプラチナ・ディスクに認定されています。

評価と受賞

第46回グラミー賞では、収録曲「ホェンエヴァー・アイ・セイ・ユア・ネーム」が最優秀ポップ・コラボレーション賞を受賞。「センド・ユア・ラヴ」も最優秀男性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞にノミネートされました。

オールミュージックのレビューにおいて、Stephen Thomas Erlewineは5点満点中2.5点を付け、「決して失敗作ではなく、不快な要素もないが、よく出来ており金のかかったムード・ミュージックでしかなく、全体的に意外性がない」と評しました。

収録曲

1. インサイド - "Inside"
2. センド・ユア・ラヴ - "Send Your Love"
3. ホェンエヴァー・アイ・セイ・ユア・ネーム - "Whenever I Say Your Name"
4. デッド・マンズ・ロープ - "Dead Man's Rope"
5. ネヴァー・カミング・ホーム - "Never Coming Home"
6. ストーレン・カー - "Stolen Car (Take Me Dancing)"
7. フォゲット・アバウト・ザ・フューチャー - "Forget About the Future"
8. ディス・ウォー - "This War"
9. ザ・ブック・オブ・マイ・ライフ - "The Book of My Life"
10. セイクレッド・ラヴ - "Sacred Love"

ボーナス・トラック

11. センド・ユア・ラヴ（DAVE AUDÉ REMIX EDIT VERSION） - "Send Your Love (Dave Audé Remix Edit Version)"
12. シェイプ・オブ・マイ・ハート（ライヴ） - "Shape of My Heart (Live)"
13. ライク・ア・ビューティフル・スマイル - "Like a Beautiful Smile"
14. ムーン・オーヴァー・バーボン・ストリート（CORNELIUS MIX） - "Moon Over Bourbon Street (Cornelius Mix)"
15. ストーレン・カー（レディオ・ヴァージョン） - "Stolen Car (Take Me Dancing) (Radio Version)"
16. ストーレン・カー（B.レクルース・ミックスfeat.トゥイスタ） - "Stolen Car (Take Me Dancing) (B. Recluse Mix)"

参加ミュージシャン

スティング - ボーカル、キーボード、ギター、ベース、ターキッシュ・クラリネット
ビセンテ・アミーゴ - フラメンコギター
メアリー・J. ブライジ - ボーカル
アヌーシュカ・シャンカル - シタール
* キッパー - キーボード、プログラミング、バッキング・ボーカル

まとめ

『セイクレッド・ラヴ』は、9.11事件後の世界で、「愛」という普遍的なテーマを深く掘り下げた、スティングの意欲作です。ワールドミュージックの要素を取り入れ、豪華ゲストを迎えた本作は、音楽的な冒険心と、社会に対するメッセージが込められた、聴きごたえのあるアルバムとなっています。

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