セイヨウウスユキソウ

セイヨウウスユキソウ（エーデルワイス）

セイヨウウスユキソウ（学名：Leontopodium alpinum）は、キク科ウスユキソウ属に分類される高山植物です。ヨーロッパではエーデルワイスとして広く知られています。日本では、ウスユキソウ属の植物全般をエーデルワイスと呼ぶことがありますが、セイヨウウスユキソウは日本には自生していません。日本産の近縁種としては、ハヤチネウスユキソウがよく似ています。

分布

セイヨウウスユキソウは、ヨーロッパアルプスが主な生育地です。ヨーロッパのウスユキソウ属は本種のみとされますが、実際にはイタリア半島東部からヨーロッパ南東部にかけて、形態の異なるレオントポディウム・ニワレが分布しています。レオントポディウム・ニワレは、セイヨウウスユキソウの亜種または別種として扱われることがあります。レオントポディウム・ニワレを亜種とした場合、その分布はピレネー山脈からトルコの山岳地帯にまで及びます。さらに、中央アジア、シベリア、パミール高原、西ヒマラヤにも亜種が存在するとされています。

生態

標高2000～2900mの高山帯の石灰岩地に自生します。綿毛が密生した地上部が特徴で、まるで羊毛をまとっているようです。開花茎は20～30cmほどですが、栽培環境下では40cmに達することもあります。花のように見える白い部分は苞葉で、実際の花は中心にある小さな黄色い筒状の花序です。開花期は7～9月で、多年草ですが寿命は長くありません。

地上部を覆う綿毛は、寒さ、乾燥、紫外線から身を守るための高地環境への適応です。レオントポディウム・ニワレは草丈が低く、綿毛がより多いのが特徴です。

人間との関係

エーデルワイスは、ヨーロッパで最も有名な高山植物の一つです。ドイツ語で「高貴な白」を意味し、その白い姿は純潔の象徴とされています。ルーマニア語では「女王の花」と呼ばれています。また、山や純潔の象徴として、様々な事物にその名が使われています。

学名の属名「Leontopodium」は、ギリシャ語で「ライオンの足」を意味します。種小名「alpinum」は、「高山に産する」という意味です。

スイスとオーストリアの国花に選ばれており、ドイツ語圏の山岳部隊のシンボルにもなっています。古くから民間療法で消化器や呼吸器の疾患に用いられてきました。園芸植物としても栽培され、観光地では苗や株が販売されています。種子から育てやすく、成長も早いのが特徴です。

しかし、ヨーロッパアルプスでは家畜の食害や観光開発によって自生株が激減しています。また、華やかなイメージとは裏腹に、実際は地味で目立たないため、野生種を見つけるのは困難です。

盛衰

13世紀頃には薬草や家畜小屋の燻蒸用として多用され、一般的な植物でした。当時は、腹痛草や赤痢草など、病名にちなんだ名前で呼ばれていました。牧畜が発展すると採取量が増え、次第に減少しました。18世紀頃には、エーデルラウテという薬草に似ていることから、エーデルワイスと呼ばれるようになりました。

19世紀のロマン主義の台頭で、エーデルワイスは愛や忠誠の象徴として人気が高まり、採取がさらに進みました。険しい場所でしか見られなくなり、採集者の転落死も多発しました。その為「アルプスの植物ローレライ」とも呼ばれるようになりました。減少が深刻化したため、1909年にスイスで採取禁止になりましたが、観光客や花屋による採集は後を絶たず、現在でも野生株を見ることは非常に困難です。

出典

参考文献
久合田弘、「エーデルワイスの盛衰」：『朝日百科 植物の世界 1』、(1997)、朝日新聞社：p.82

関連項目

エーデルワイス
ウスユキソウ属

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