セグロアシナガバチ

セグロアシナガバチ

セグロアシナガバチ（学名: Polistes jokahamae）は、膜翅目スズメバチ科アシナガバチ属に分類されるハチの一種です。和名には「背黒」と「脚長」という、その外見的な特徴がよく表れています。一般的に、人里近くや市街地でも比較的よく見かけられる昆虫ですが、その生態や危険性について理解しておくことが重要です。

特徴

成虫の体長は、オス、メスともに概ね20ミリメートルから26ミリメートルの範囲です。体は黒色を基調とし、腹部などに鮮やかな黄褐色の帯状や点状の斑紋が見られます。この体色と模様によって、ある程度本種を識別することが可能です。

しかし、セグロアシナガバチは、同属のキアシナガバチ（Polistes rothneyi iwatai）と外見が酷似しており、専門家でなければ見分けるのが難しい場合があります。両種を区別するための最も確実なポイントの一つは、メスの触角の色です。セグロアシナガバチのメスは、触角の大部分、ほぼ全体が黄色い色をしています。一方、キアシナガバチのメスの場合、触角の先端から3分の1ほどだけが黄色く、残りの部分は黒っぽい色をしています。この触角の色の違いに注目することで、正確な識別が可能となります。

生息環境と分布

セグロアシナガバチは、開けた場所や人間の生活圏に近い環境を好みます。特に、建物の軒下やベランダ、庭の木、時には公園のベンチの下など、雨風をしのげる場所に巣を作ることがあります。このため、意図せずとも人間との接触機会が多くなる傾向があります。

日本の国内においては、本州から南の地域に広く分布していることが確認されています。四国や九州、南西諸島の一部など温暖な地域を中心に生息していますが、近年の環境変化や偶発的な移動により、分布域が広がる可能性も指摘されています。実際に、これまでの知見では珍しい事例として、北海道の石狩市で本種の営巣が確認された記録があり、分布の北限を示す興味深い事例となっています。

危険性

アシナガバチの仲間であるセグロアシナガバチも、他のスズメバチ類と同様に毒針を持っています。巣に近づいたり、ハチを刺激したりすると、防衛のために人を刺すことがあります。刺された際の痛みは強く、患部が腫れたり熱を持ったりすることが一般的です。

特に危険なのは、過去にハチに刺された経験がある人や、ハチ毒に対してアレルギー体質を持つ人です。二度目以降に刺された場合、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な全身性アレルギー反応を引き起こすリスクが高まります。アナフィラキシーショックは、呼吸困難、血圧低下、意識障害などの症状を伴い、場合によっては迅速な医療措置がなければ命に関わる危険性があります。そのため、セグロアシナガバチに限らず、アシナガバチやスズメバチの巣を見つけた際は、決して刺激せず、専門家や役所に相談して駆除を依頼することが推奨されます。また、近くを飛んでいるハチに対しても、手で払ったり大きな音を立てたりせず、静かにその場を離れるように心がけることが重要です。

近縁種

セグロアシナガバチには、分類学上、沖縄に生息する亜種であるオキナワセグロアシナガバチ（学名: Polistes jokahamae okinawaensis）が存在します。また、前述したように、外見がよく似ているキアシナガバチ（学名: Polistes rothneyi iwatai）も近縁な種として知られています。これらの種は、形態や分布において差異があり、研究の対象となっています。

セグロアシナガバチについて正しい知識を持つことは、その生態を理解し、無用なトラブルを避けるために役立ちます。見かけた際は、適切な距離を保ち、安全に配慮することが大切です。

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