セケンエンラー・タア

セケンエンラー・タアについて

概要

セケンエンラー・タア（Seqenenre Tao）は、紀元前1591年頃から1574年または1559年頃から1555年頃まで在位した古代エジプトのファラオです。彼は第17王朝の中で8番目または13番目に位置する王であり、しばしばセケンエンラー2世またはタア2世とも呼ばれています。セケンエンラー・タアは、先代の王セナクトエンラー・イアフメスとその王妃テティシェリの息子であり、王妃イアフヘテプ1世との間に後の第18王朝の初代王イアフメス1世をもうけました。

政治的背景

当時のエジプトは、異民族の連合体であるヒクソスの支配下にありました。土着のエジプト人の王朝である第17王朝は、第15王朝の勢力下で下エジプトを治めるアヴァリスに従属していました。伝説や文献においては、セケンエンラー・タアがヒクソスのアペピ（アポフィス）王から受けた命令についての興味深いエピソードが語られています。アペピは、テーベの神殿にいるカバの鳴き声がうるさいとし、その処理を要求しました。この要求に対し、セケンエンラー・タアは使者を温かく迎え入れ、忠誠を示したとされています。

内部の葛藤

このような要求は、表面的にはテーベへの影響力を抑えるためのものでありながら、実際にはセケンエンラー・タアに対する策略であった可能性も排除できません。カバは、その豊穣と多産の象徴でありつつ、凶暴で危険な生物としても知られていました。このため、ファラオがカバを狩ることは、民衆を守るための重要な任務でした。しかし、この行為がアヴァリスへ対する反抗の意図として解釈される危険性もあったため、セケンエンラーは厳しい選択を強いられました。

戦争の開始

結局、セケンエンラー・タアはヒクソスに対して反逆の意志を持って戦いを始めました。遺跡から発掘されたデル・エル・バラスの宮殿や軍事基地は、彼の軍事活動の証拠を示しています。彼のミイラもまた、彼が暴力的な死を遂げたことを暗示しています。1881年に発見された彼のミイラの頭部には、武器によって生じた裂傷が多く見られ、その傷の方向からは、セケンエンラーが攻撃された際に不意を突かれた可能性が考えられています。

ミイラの状態

セケンエンラー・タアのミイラは、他の王のミイラと比べて保存状態が著しく悪く、急いで防腐処理が行われた遺体と考えられています。1960年代に行われたX線調査では、脳の摘出や眼窩への詰め物などの一般的な防腐手法が施されていなかったことが判明しました。ハリスとウィークスによると、彼のミイラには体液が残っており、悪臭が漂っていたと報告されています。

死の真相

2021年の研究では、セケンエンラー・タアの死因が処刑である可能性が指摘されました。後手に縛られていたという事実や、激しい攻撃を受けた可能性から、彼は戦場で捕らえられた後に処刑されたというのが研究者たちの見解です。また、彼のミイラのスキャンにより、以前の調査では確認されていなかった致命的な傷も発見されました。これらの傷はヒクソスの武器によるものとされ、彼の死因を裏付ける証拠となりました。

継承

セケンエンラー・タアの遺族は、当時彼の子供であるイアフメスが幼かったため、兄弟のカーメスが王位を継ぐことになりました。彼の治世は古代エジプトの激動の時代を象徴するものであり、歴史において重要な役割を果たしました。

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