セッカ

セッカについて

セッカ（学名：Cisticola juncidis）は、スズメ目セッカ科に分類される小さな鳥です。日本では、その姿はあまり目立ちませんが、繁殖期には独特な行動を見せます。

形態

全長約13cmとスズメよりも小さく、翼を広げた時の長さは約16cmです。夏羽と冬羽で多少の違いはありますが、雌雄ほぼ同じ色をしています。成鳥の夏羽は、頭部が褐色で、体の上面は黄褐色に黒褐色の縦縞模様があり、下面は淡い黄褐色です。尾羽は黒褐色で先端が白く、広げると扇状になります。冬羽では、頭部も黄褐色になり、黒褐色の縦縞模様が現れます。オスの成鳥は口内が黒いのに対し、メスのくちばしはオスよりも白っぽいのが特徴です。

生態

セッカは、チガヤやススキなどが生える平地から山地の草原、河原、水田などに生息し、昆虫やクモを食べて生活しています。繁殖期になると、オスは独特な巣作りを行います。草やススキの葉を、クモの糸の中でも特殊な、粘着性のない糸を使って縫い合わせ、楕円形の巣を作ります。この巣は、メスを惹きつけるためのアピールに使われます。メスは、この巣を気に入ると、チガヤの穂などで内装を整え、産卵場所とします。

繁殖期には、オスが「ヒッヒッヒッヒッ・・・・ジャッジャッジャッ」と鳴きながら、波線状に低空を飛翔する姿がよく見られます。これは、メスへのアピール行動です。オスがクモの糸を使って葉を縫い合わせる様子は、2021年に動物カメラマンの平野伸明氏によって初めて撮影され、NHKの番組「ダーウィンが来た！」で放送されました。映像によると、オスは特殊なクモの糸をほぐしてゆるい糸にし、葉に穴を開けて糸を通し、同じ穴に再度通す作業を繰り返します。この作業により、糸は細くなりますが、先端の小さな塊が葉の穴に引っかかり、ほどけない仕組みになっています。この裁縫によって葉を組み合わせ、巣を作ります。

オスは、まず数枚の葉を重ねて縫い合わせ、底を作ります。さらに、その葉を周りの草の葉と縫い合わせ、壺状に形成していきます。オスは、巣作りを終えると、さえずりでメスを呼び寄せます。メスが巣を気に入れば、そこで産卵します。オスは、メスが巣を選んだら、新たな巣作りに取り掛かります。多い時には20個もの巣を作ると言われています。

メスは、巣の内壁をチガヤの穂などで整え、ヒナが過ごしやすい環境を作ります。子育てはメスのみが行い、5個程度の卵を産み、主に昆虫をヒナに運びます。オスが子育てに参加しないのは、巣が天敵に襲われやすく、子育ての成功率が低いからです。そのため、オスは繁殖期を通して巣作りを続け、繁殖の機会を増やそうとします。メスも、年に複数回子育てを行い、種の存続を図っています。

分布

セッカは、アフリカ、ヨーロッパ南部、インド、東南アジア、中国南部、台湾、日本、オーストラリア北部に広く分布しています。日本では、沖縄諸島から東北地方にかけて生息していますが、北日本に住む個体は冬になると暖かい地方に移動します。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）によって、セッカは軽度懸念（LC）の指定を受けています。しかし、日本では、いくつかの都道府県でレッドリストに指定されており、その保全状況には注意が必要です。

絶滅寸前（CR）：秋田県、山形県、長野県
絶滅寸前または絶滅危惧種（絶滅危惧I類、CRまたはEN）：千葉県
危急種（VU）：福島県
準絶滅危惧（NT）：岩手県、富山県、石川県、福井県、滋賀県、大阪府、和歌山県、鳥取県
その他：青森県、神奈川県

参考文献

叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥』（第2版）山と溪谷社、2006年10月1日。ISBN 4635070077。
中川雄三（監修） 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325。

関連項目

オオセッカ

外部リンク

* セッカ - eBird

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