セッテ・コムーニ

セッテ・コムーニ：アジアーゴ高原の7つの自治体とチンブロ語の遺産

イタリア北東部、ヴェネト州ヴィチェンツァ県の北東部に位置するセッテ・コムーニ（Sette Comuni）は、アジアーゴ高原と呼ばれる地域を指します。イタリア語で「7つの自治体」を意味するこの名称は、地域を構成する歴史的な7つの自治体（コムーネ）に由来します。しかし、1796年にルジアーナの一部であったコンコが独立したため、現在は8つの自治体で構成されています。

地理と歴史

セッテ・コムーニは、標高の高いアジアーゴ高原に広がり、周辺地域とは異なる民族的・文化的特徴を有しています。中世には、ミラノ公国やヴェネツィア共和国の支配下にあっても、高度な自治を維持した都市同盟を形成していました。この独自の自治は、宗主国への忠誠を誓う代わりに認められた特権でした。しかし、1797年のナポレオン戦争によるヴェネツィア共和国の崩壊、そして1807年にはセッテ・コムーニの自治も終焉を迎えます。

チンブロ語とイタリア化政策

セッテ・コムーニの住民は、かつて独自のゲルマン系言語であるチンブロ語（キンブリ語）を母語としていました。1854年には、2万2700人を超える話者がいたと推定されています。しかし、20世紀初頭に台頭したファシスト政権は、イタリア化政策を推進。チンブロ語は強い圧力を受け、ほぼ絶滅状態に追い込まれました。エットーレ・トロメイといったファシスト党員がその政策の中心人物として知られています。今日では、ロアーナとその周辺地域の一部でわずかに話者が見られるのみです。1978年の調査では、セッテ・コムーニ全体で1500人の話者が確認され、ロアーナの人口の40%、メッサセルヴァ・ディ・ロアーナ・ロッツォの人口の70%がチンブロ語を話していたとされています。

言語と文化の現状

チンブロ語は、ゲルマン語派の上部ドイツ語に分類され、バイエルン語の方言に属します。北イタリアにおいては言語島を形成しており、トレント自治県やヴェローナ県にも分布しています。セッテ・コムーニでは、セッテ・コムーニ方言が話されていました。ユネスコはチンブロ語を危機に瀕する言語に指定しており、2000年時点ではロアーナにおけるチンブロ語の消滅が懸念されていました。

しかし、チンブロ語と文化の復興を目指す動きもあります。ロアーナには、アウグスティン・プルナー文化研究所が設立され、チンブロ語の保存と普及、そして他のチンブロ語話者地域との交流に貢献しています。現在でも、セッテ・コムーニの地名や人名に、チンブロ語の痕跡を見ることができます。

まとめ

セッテ・コムーニは、歴史、文化、そして言語の多様性と変化を語る、イタリア北東部の魅力的な地域です。かつて繁栄したチンブロ語は危機に瀕しているものの、その文化遺産は人々の記憶と努力によって未来へと繋がる可能性を秘めています。この地域の歴史と文化を理解することは、ヨーロッパの言語と文化の多様性を守る上で重要な意義を持っています。

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