セトナクト

セトナクトの生涯と治世

概要

セトナクト（英: Setnakhte）は、紀元前1185年から紀元前1182年にかけてエジプト新王国・第20王朝の初代ファラオとしてその地位を確立しました。彼の即位は様々な疑問を呼び起こし、その出自や在位の正当性については明確な情報が少ないため、多くの憶測を生んでいます。

生涯と即位

セトナクトは、女王タウセルトの死後に即位し、新たな王朝を形成しました。彼の王位継承権に関する記録はあまり残っておらず、平民出身の可能性が指摘される一方で、妻ティイ・メルエンエスが前王メルエンプタハの娘であるとの説もあります。この場合、彼は王家の血縁を引いていることになります。また、ラムセス2世の孫の一人であるとする説も存在します。

彼の治世においては、ラムセス3世をはじめとする後の王たちが、セトナクトを祖とする王家の出自を強く意識していたことが分かります。セトナクトの子孫は、アメンヘルケプシェフやセトヘルケプシェフなど、19王朝で一般的に使用されていた名前を引き継いでいます。

孫のラムセス4世が編纂した大ハリス・パピルスによると、セトナクトは第19王朝最後の時代に、アジア人の首長による混乱を収束させ、秩序を回復したと言われています。しかし、当時の記録からはその混乱の実態が明らかでないことも示されています。

力の確立

エレファンティネ島で発見された治世2年目の碑文には、「王の威厳に対抗するものはなし」と記されており、セトナクトの即位初期には、王権に挑む勢力が存在していたことを示唆しています。彼の即位に正当性が無かったことを考えると、その対立する勢力はタウセルトの支持者だった可能性があります。

近年発見された神官バクエンコンスの石碑は、即位初年度にタウセルトが生存していたことを示しており、タウセルトの死後にセトナクトが完全にエジプト全土を支配下に置いたと考えられます。セトナクトの在位は非常に短く、約3年と見積もられていますが、即位時には既に高齢であったと推測されています。

また、バクエンコンスの石碑には、セトナクトがアメン=ラー神殿の建設を開始したことが記録されており、その後ラムセス3世に引き継がれることになります。

埋葬と墓の歴史

セトナクトの王墓はKV11として知られていますが、掘削中にアメンメセス王の墓にぶつかり工事は中断しました。そのため、タウセルトの墓であるKV14が彼の埋葬の場として拡張され、死後はそこで埋葬されたと考えられています。また、アメンヘテプ2世の墓からも得られた「船の中のミイラ」が他の王のミイラと共に発見され、セトナクトのものであると推定されましたが、1901年に破壊されてしまいました。

セトナクトという王の治世は短いものでしたが、彼の即位や治世にまつわる疑問は、エジプトの古代史の理解をより豊かにするための重要な要素です。彼が築いた王朝は後の王たちにとっても重要な歴史的背景となり、エジプトの歴史に多大な影響を与えました。

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