ラムセス3世

ラムセス3世について

ラムセス3世（Ramesses III）は、エジプト新王国の第20王朝の第2代ファラオであり、重要な歴史的役割を果たしました。彼は古代エジプトの歴史において大きな権威を持ったファラオの一人として知られていますが、その統治は数々の課題に直面しました。彼の父はセトナクト、母はティイ・メルエンエスであり、在位期間は紀元前1186年から紀元前1155年とされています。

即位と背景

ラムセス3世はシェムウ（乾季・収穫期）の1月26日に即位し、31年間の治世を持ちました。彼は第19王朝のラムセス2世の影響を受け、同様の統治スタイルを目指していたと考えられています。彼の父、セトナクトは第20王朝の初代ファラオであり、彼の登位は王朝の安定に寄与しました。

即位以前の動乱の中で、ラムセス3世は高齢の父の共同統治者として、エジプトの統治に関与しましたが、彼自身の治世は外敵との戦争と国内問題に苦しむものでした。

外敵との戦闘

ラムセス3世の治世は、古代ギリシャが暗黒時代に入り、外敵である「海の民」やリビア人からの脅威に晒される時期と重なりました。彼は在位8年目に「海の民」と呼ばれる侵略者と遭遇し、戦いを迎えます。「海の民」はペレセト、チェッケル、シェケレシュなどの様々な民族から成り、エジプト領内に侵入しました。

この戦争において、エジプト軍は陸路と海上からの二つの進軍に立ち向かいました。ラムセス3世は、海岸に弓兵を配置し、「海の民」の軍船に対して利用可能な軍事力を駆使しました。この戦術によって、エジプト軍は「海の民」を撃退し、その後のカナアンへの進出を防いだとされます。

リビア人との戦いも重要で、ラムセス3世は在位5年目と11年目にわたり、リビア軍に対して大規模な戦争を展開しました。これらの戦いでは、リビア軍との激しい接触があったものの、最終的にはエジプト軍が勝利を収め、リビア人はエジプトの傭兵として組み込まれていきました。

内部の混乱とストライキ

ラムセス3世の治世末期には、国内において職人たちのストライキが勃発しました。これは、職人達への食糧供給の遅れが原因であり、彼らは昼間の間、王家の谷にて座り込み抗議を行いました。このストライキは古代エジプトの記録の中で最も古いものであり、国全体の経済的危機を象徴する出来事となりました。

また、ラムセス3世は神官階級の影響を強く受け、神殿建築や礼拝物の寄進に多大な資源を注ぎました。特にテーベ（現：ルクソール）に建設されたカルナック神殿は、彼の治世の象徴的な建築物となりましたが、同時に国家財政に負担をかけ、後の混乱の一因となりました。

暗殺とその後

ラムセス3世は、王宮内での暗殺未遂事件の犠牲者となったことも知られています。この事件は彼の妻ティイが教唆し、自らの息子に王位を継がせるためのものでした。ラムセス3世の死因については長らく議論がありましたが、近年の調査により暗殺であったことが確認されています。彼は約65歳で亡くなり、その後の第20王朝は彼の死をきっかけに衰退の道を辿ることとなりました。

遺産と家族

ラムセス3世の家族には数名の妻と子供が存在し、彼の末裔は後のファラオにも影響を与えました。その中でもラムセス4世は彼の後を継ぎ、続く王朝の形成に寄与しました。自身のミイラは1881年に発見され、その状態は非常に良好であり、多くの考古学者の注目を集めています。

彼の治世や前後の歴史的背景は古代エジプトにおける重要な転換点を示しており、ラムセス3世はその最も代表的なファラオとして今なお研究され続けています。

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