セフタジジム

セフタジジム（Ceftazidime）

概要

セフタジジム（化学名：Ceftazidime、略号：CAZ）は、広範囲の細菌感染症に対して有効性を示す抗菌薬です。分類としては、第三世代のセファロスポリン系抗生物質に位置づけられます。日本国内では「モダシン」という製品名で、また海外では「フォルタズ（Fortaz）」などの名称で広く医療現場で使用されています。

作用機序

この薬剤の効果は、細菌の細胞壁の構築を妨げることによって発揮されます。細菌が生存し増殖するためには強固な細胞壁が必要不可欠ですが、セフタジジムはこの細胞壁を作る過程を阻害することで、細菌の増殖を抑え、最終的に死滅させます。ヒトの細胞には細胞壁が存在しないため、細菌に対して選択的に作用し、比較的安全に使用できる薬剤です。

適用される主な疾患

セフタジジムは、以下のような多岐にわたる細菌感染症の治療に用いられます。特に、他の多くの抗菌薬に対する耐性を持つことがある緑膿菌（Pseudomonas aeruginosa）による感染症に対しても有効性を示す点が特徴の一つです。

関節感染症
髄膜炎（細菌性）
肺炎
敗血症
尿路感染症
悪性外耳炎
緑膿菌感染症
ビブリオ感染症

このように、呼吸器系、尿路系、神経系など、体の様々な部位で発生する重篤な細菌感染症に対する治療選択肢として重要です。

投与方法

セフタジジムの投与は、注射によって行われます。一般的には、静脈内注射または筋肉内注射のいずれかの方法が選択されます。ただし、日本国内で製品化されている製剤は、主に点滴による静脈内投与を前提としています。

副作用と使用上の注意

薬剤の使用に伴い、いくつかの副作用が発生する可能性があります。比較的よく報告される副作用としては、吐き気や嘔吐といった消化器症状、発疹やかゆみなどのアレルギー反応、そして注射部位の痛みや腫れなどが挙げられます。稀な副作用としては、クロストリジウム・ディフィシル菌の異常増殖による下痢（偽膜性大腸炎など）が報告されています。

また、過去にペニシリン系の抗菌薬を服用してアナフィラキシー（重篤なアレルギー反応）を経験したことがある患者さんには、交叉アレルギーのリスクがあるため、セフタジジムの使用は推奨されません。

妊娠中や授乳中の女性への投与に関しては、これまでの知見から比較的安全であると考えられていますが、使用にあたっては医師との相談が必要です。

歴史と位置づけ

セフタジジムは、1978年にその特許が認められ、その後の開発を経て1984年に医療用医薬品として市場に導入されました。登場以降、幅広い抗菌スペクトルを持つ強力な薬剤として、多くの細菌感染症治療に貢献してきました。

この薬剤は、世界保健機関（WHO）が定める「必須医薬品モデル・リスト」に収載されています。これは、限られた医療資源の中でも、医療制度において最も重要かつ効果的で安全であると考えられる医薬品のリストであり、セフタジジムが世界的な公衆衛生において極めて重要な薬剤の一つであることを示しています。

経済的側面

セフタジジムは、既に特許期間が満了しているため、後発医薬品（ジェネリック医薬品）が多数製造・販売されています。これにより、比較的安価に入手することが可能です。

開発途上国における卸売価格は、一日あたり2.84から16.76米ドル程度と報告されています。一方、米国における一連の治療にかかる費用は、100から200米ドル程度とされています。

これらの情報から、セフタジジムが効果的であるだけでなく、比較的経済的な側面からも利用しやすい薬剤であることがわかります。

（出典：[原文の情報源に基づき記述していますが、具体的な出典名は割愛します]）

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