セベソ事故

セベソ事故について

セベソ事故（Seveso disaster）は、1976年7月10日にイタリアのロンバルディア州セベソで発生した化学工場の爆発事故です。この事故は特にダイオキシンの一種であるTCDD（2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン）の大規模な放出によって引き起こされました。犠牲地域は約1800ヘクタールに及び、新宿区とほぼ同程度の面積が汚染され、多くの住民が被害を受けました。

事故の背景

事故が発生した工場は、ジボダン社の子会社であるICMESAが所有しており、化学物質の製造を行っていました。当時工場の周辺には、人口17,000人以上が住む地域があり、事故の影響は広範囲に及びました。工場は古くから存在しており、住民はその危険性に気づいていませんでした。

事故の経過

事故の発生は、工場内での化学反応が失敗したことによって引き起こされました。7月9日、反応蒸留釜に大量の化学物質が投入され、通常のプロセスが始まったところで異常が生じました。結果的に、反応釜内温度が監視されていなかったため、過熱し、7月10日に破裂が発生。約数キログラムのTCDDが大気中に放出され、瞬時に広範囲に飛散しました。

初動対応と影響

事故直後、ICMESA社や自治体の初動対応は遅れ、住民には野菜や果物を食べないよう求められただけでした。ダイオキシンが放出されたことが公表されたのは1週間後であり、混乱が広がりました。自国の政府により、汚染地域は立ち入り禁止となり、住民は強制的に避難を余儀なくされました。

この事故による健康被害も深刻で、毒性が高いダイオキシンの影響を受けた住民の中から多くの皮膚疾患や流産の報告がありました。特に、流産率は34%に上昇し、奇形出生率の増加も見受けられました。

除染作業とその後

事故後、イタリア政府は汚染地域の除染と回復作業に着手しました。1977年には科学的調査と共に経済的援助や医療支援が始まりました。1980年には補償金が増額され、過去に遡り多くの地域住民に分配されました。一方、法的措置が進められ、工場の責任者らに対する裁判も行われ、最終的には有罪判決が下されました。

セベソ指令の策定

セベソ事故の教訓を経て、EUは化学工場における安全規制に関するセベソ指令を定めました。この指令は、工場の安全を強化し、同様の事故を防ぐための重要な枠組みとなっています。現在、セベソ指令は2005年に改訂された内容に基づいて実施されています。

健康への長期的影響

この事故から数年が経過しましたが、環境汚染による健康影響は未だに対策が必要です。研究者は、心疾患、ガン、糖尿病などの疾患発生率が増加していることを示唆しています。特定の地域では奇形児出生の傾向が見られたものの、長期的にはその状況も変化してきています。

事故から40年以上が経過した今、大規模な除染は完了し、土壌のTCDD濃度も他の地域と同等のレベルになっていますが、住民の健康への影響や関心は引き続き注視されるべき事項です。

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