セミョン・コゾルポフ

セミョン・マトヴェーヴィチ・コゾルポフ

ロシアの偉大なチェロ奏者であり、卓越した教育者として知られるセミョン・マトヴェーヴィチ・コゾルポフは、1886年4月22日（ユリウス暦では4月10日）に生まれ、1961年4月18日にその生涯を閉じました。オレンブルク州のクラスノホルムスカヤ村で生を受けた彼は、その後のロシア音楽史において、特にチェロ教育の分野で計り知れない影響を与えることになります。

音楽の道へ

幼少期にはヴァイオリンを学んでいましたが、不慮の左手の捻挫が転機となり、チェロへと楽器を変えることになります。チェロの手ほどきを受けたのは、オレンブルクに駐留していたロシア軍の兵士であり、アマチュア音楽家でもあったヴラディーミル・フォン・コッホでした。この出会いが、後の名チェリスト・教育者コゾルポフの礎となります。

専門的な研鑽と演奏活動

1904年、彼はサンクトペテルブルク音楽院に進学し、本格的な音楽の道を進みます。ここでは、著名なチェロ教師であるアレクサンドル・ヴェルジビロヴィチとイヴァン・ザイフェルトに師事し、高度な演奏技術と音楽性を磨きました。1907年に音楽院を卒業した後、彼は1912年までロシアを代表する劇場の一つであるボリショイ劇場のチェロ奏者として活躍しました。演奏家としての実力は高く評価され、1911年にはロシア音楽協会創立50周年を記念して開催された音楽コンクールで優勝を果たしています。

教育者としてのキャリア

演奏活動と並行して、コゾルポフは教育者としての才能を開花させます。1912年から1916年までサラトフ音楽院で教鞭を執った後、1916年から1920年にはキエフ音楽院に移りました。しかし、その後再びサラトフ音楽院に戻り、後進の指導に力を注ぎました。

彼の教育者としての活動の頂点は、1923年から亡くなるまでの長きにわたるモスクワ音楽院での奉職でしょう。この名門音楽院で彼は継続的にチェロを教え、1936年から1954年までの間はチェロ科の学科長という要職を務めました。彼の指導の下、多くの才能あるチェリストが育ち、ロシア国内外の音楽界で活躍することとなります。特に、世界的に著名なチェリストであるスヴャトスラフ・クヌシェヴィツキー、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、ヴァレンティン・ベルリンスキーらは、彼に師事した代表的な弟子として知られています。

栄誉と晩年

長年にわたる音楽教育への貢献と演奏活動が認められ、1946年にはロシア政府より人民芸術家の称号が授与されました。これは、当時のソビエト連邦における芸術家にとって最高の栄誉の一つであり、彼の功績がいかに偉大であったかを示しています。

1961年4月18日、セミョン・マトヴェーヴィチ・コゾルポフはモスクワでその波乱に満ちた、しかし実り豊かな生涯を終えました。彼の情熱的な指導と卓越した演奏は、多くの音楽家に影響を与え、ロシアのチェロ演奏の伝統確立に貢献しました。

家族

コゾルポフの音楽への情熱は、彼の子供たちにも受け継がれました。娘たちは皆、音楽の道を歩み、イリーナはピアニスト、ガリーナはチェリスト、マリナはヴァイオリニストとして、それぞれの分野で活躍しました。

セミョン・マトヴェーヴィチ・コゾルポフは、演奏家としての才能はもちろん、教育者としてロシア音楽界に多大な貢献をした人物として、その名を歴史に刻んでいます。彼の育成した弟子たちは、今日も世界中の舞台で活躍し、彼の音楽的遺産を伝えています。

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