スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキー

スヴャトスラフ・ニコラーエヴィチ・クヌシェヴィツキー（1908年1月6日 - 1963年2月19日）は、20世紀ソビエト連邦が生んだ傑出したチェリストであり、高名な音楽教育者でもありました。サラトフ県ペトロフスクで生を受け、モスクワでその生涯を終えました。

彼の音楽の道は、1923年にモスクワ音楽院に入学したことから始まります。チェロをセミョン・コゾルポフに師事し、研鑽を積みました。1929年に音楽院を卒業すると、すぐにボリショイ劇場のオーケストラで首席チェリストに就任し、1943年までその重責を担いました。この間、1933年には全ソヴィエト音楽コンクールで優勝を果たし、これを機にソリストとしてのキャリアと室内楽奏者としての活動も本格的に開始しました。

クヌシェヴィツキーのキャリアにおいて特筆すべきは、1943年に結成された伝説的な三重奏団、「オイストラフ・トリオ」での活動です。ヴァイオリニストのダヴィッド・オイストラフ、ピアニストのレフ・オボーリンという同時代の巨匠たちと共に、彼は自身の死に至るまでこのアンサンブルで精力的に演奏を行いました。彼らの演奏は国内外で高い評価を得ました。

また、彼は同時代のソビエトを代表する作曲家たちからも厚い信頼を寄せられていました。ニコライ・ミャスコフスキー、アラム・ハチャトゥリアン、レインゴリト・グリエール、セルゲイ・ワシレンコといった作曲家たちは、自身のチェロ協奏曲を彼に献呈しています。これらの作品を積極的に演奏することで、クヌシェヴィツキーはチェロのレパートリー拡大に大きく貢献しました。さらに、ピョートル・チャイコフスキーの『ロココの主題による変奏曲』の原典版が1956年に復元された際には、その初演を務めるなど、音楽史においても重要な役割を果たしました。

教育者としての功績も大きく、1942年からは母校であるモスクワ音楽院で後進の指導にあたりました。1950年には教授に昇進し、1954年から1959年までの間はチェロとコントラバスの学科長を務めるなど、ソビエトのチェロ教育の発展に尽力しました。

その功績はソビエト国家からも認められ、1950年にスターリン賞を受賞、1955年にはロシア連邦共和国功労芸術労働者の称号を授与されました。

家族としては、兄に作曲家で軽音楽の指揮者としても知られるヴィクトル・クヌシェヴィツキーがいました。また、ソプラノ歌手のナタリア・シュピレルを妻としていました。1963年2月19日、モスクワにて55年の生涯を閉じました。彼の遺した演奏や教育者としての影響は、今日まで受け継がれています。

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