セルゲイ・ショイグ

セルゲイ・クジュゲトヴィチ・ショイグの生涯と経歴

セルゲイ・クジュゲトヴィチ・ショイグ（Sergei Kuzhugetovich Shoigu、1955年5月21日 - ）は、ロシアの政治家であり、軍人です。トゥヴァ人の父とウクライナ人の母の間に生まれ、そのキャリアを通じて重要な役職を歴任しました。

生い立ちと教育

1955年、ショイグはトゥヴァ自治州のチャダーナ市で誕生しました。父親は地元紙の編集者であり、後にソ連共産党の幹部を務めました。ショイグは幼少期にキリスト教正教会の洗礼を受けましたが、後に仏教の伝統を尊重するようになったとされています。1972年にクラスノヤルスク工業大学に入学し、建築学を専攻。土木技師の資格を取得し卒業しました。興味深いことに、彼は兵役経験がないにもかかわらず、後に上級大将まで昇進しています。

初期のキャリア

大学卒業後、ショイグはシベリア各地の企業で建築技師や管理人として働きました。1980年代後半には、党の役職に就き、1990年にモスクワに移住しました。そこで、父親のコネクションを通じて、ロシア連邦共和国国家建築・建設委員会の副議長に就任。この時期に、後のロシア大統領ボリス・エリツィンと知り合い、親交を深めました。両者とも土木工学の出身であったことが、エリツィンの信頼を得る一因となりました。

ロシア非常事態省大臣

1991年、ショイグはエリツィンによって新設されたロシア民間防衛隊の隊長に任命され、災害対応システムの責任者となりました。その後、ロシア非常事態省の初代議長に就任。ショイグは、非常事態省の拡大に尽力し、その実務的な管理スタイルと高い知名度で国民の人気を集めました。同省は、洪水、地震、テロなどの緊急事態に対応し、2002年にはロシア国家消防局を吸収し、国内で3番目に大きな組織となりました。1990年代には、軍事的な役割も担い、少将から上級大将へと昇進しました。また、「統一」党の党首として、政治的な影響力も持ちました。

モスクワ州知事

20年以上にわたり非常事態相を務めた後、2012年3月にはモスクワ州知事に立候補し、同年5月に選出されました。

ロシア国防大臣

2012年11月6日、ショイグはアナトーリー・セルジュコフの後任として国防大臣に就任しました。この任命は、軍事経験のないショイグを抜擢した異例の人事であり、国民からの高い支持と非常事態省での実績が考慮されたものとされています。ショイグは、軍の近代化と専門性の向上を推進しました。先任のセルジュコフが軍部から不人気だったため、ショイグは軍の支持を得るために、旧体制の復活や官僚の復職などの対策を実行しました。軍の近代化を進めつつも、徴兵制度の拡大や軍事的愛国的な教育も推進しました。

ウクライナ紛争とシリア内戦

ショイグは、ウクライナ危機やシリア内戦においてロシア軍を指揮しました。2014年のクリミア併合では重要な役割を果たし、シリア内戦ではロシア軍の介入を主導しました。これらの軍事介入は、西側諸国から批判を浴びています。

2022年のウクライナ侵攻では、ショイグは侵攻の目的を「ロシア連邦を守るため」と説明しました。しかし、この侵攻は国際的な非難を浴び、多くの人命が失われる結果となりました。ウクライナ侵攻におけるロシア軍の損失と作戦の失敗は、ショイグの評価を大きく下げる要因となりました。

中国との関係

ショイグは、中国との軍事協力関係を強化しました。ロシアと中国は合同軍事演習を定期的に実施し、相互の軍事的な連携を深めています。

安全保障会議書記

2024年5月、ショイグは国防相を退任し、安全保障会議書記に就任しました。後任の国防相には、経済学者のアンドレイ・ベロウソフが任命され、ロシアがウクライナとの長期的な消耗戦を計画しているという見方が出ています。

制裁と逮捕状

ショイグは、ウクライナ侵攻を理由に欧州連合やアメリカ、日本から制裁を受けています。2024年6月には、国際刑事裁判所からウクライナの電力インフラ攻撃に関与したとして、逮捕状が出されています。

人物像と評価

ショイグは、プーチン大統領の忠実な支持者と見なされていますが、ウクライナ侵攻後の失態により、評価を大きく落としました。かつてはプーチンの後継者候補と目されていましたが、現在はその地位を失っています。公の場への露出が少ないことや、軍事的な経験不足も批判の対象となっています。

家族

ショイグは、エレナ・アレクサンドロブナ・ショイグと結婚し、二人の娘、ユリアとクセニアをもうけています。娘のクセニアは、モスクワ郊外に宮殿を所有しているとされています。ショイグの家族は、時折メディアに取り上げられることがあります。

趣味と宗教

ショイグは、歴史研究、スポーツ観戦、刀剣収集、音楽、水彩画、木片収集など、多岐にわたる趣味を持っています。宗教的には、仏教の伝統を尊重していますが、2008年にロシア正教会の洗礼を受けています。

まとめ

セルゲイ・ショイグは、ロシアの政治と軍事を長年にわたり支えてきた人物です。非常事態省での実績から国防大臣へと抜擢され、その間にロシア軍の近代化を推進しました。しかし、ウクライナ侵攻をめぐる失態や、その後の国際的な制裁により、彼の評価は大きく変動しました。現在、安全保障会議書記として、引き続きロシアの政治に関与しています。

もう一度検索