セルトリ細胞

セルトリ細胞：精子形成を支える細胞

1865年、イタリアのパヴィア大学のエンリコ・セルトリによって精巣内で発見されたセルトリ細胞は、精巣の機能において中心的な役割を担う細胞です。精細管と呼ばれる精子を作る管の内壁に位置し、その管腔に向かって伸びる柱状の形態をしています。

セルトリ細胞の形態と機能

セルトリ細胞は、基底部と細胞体の2つの主要な部分から構成されています。細胞内には滑面小胞体が豊富に存在しており、これは細胞内での脂質代謝やステロイドホルモン合成に関与していると考えられています。

その機能は多岐に渡り、精子形成を支える上で不可欠です。主な機能としては以下の点が挙げられます。

精細胞の支持と栄養供給: セルトリ細胞は精細胞を物理的に支え、成長に必要な栄養分を供給します。まるで精細胞の「ゆりかご」のような役割を果たしていると言えるでしょう。精細胞はセルトリ細胞と緊密な接触を保ちながら、発達段階を順次進めていきます。
タンパク質の分泌: セルトリ細胞は、精子の成熟や機能発揮に重要な様々なタンパク質を分泌します。これには、精子の運動性に関わる因子や、精子の生存を助ける因子などが含まれます。
精子離脱の補助: 精子が成熟し、精細管から放出される過程（精子離脱）をセルトリ細胞は積極的に支援します。精子がスムーズに放出されるための環境を整える役割を担っています。
食作用: セルトリ細胞は、細胞の老廃物や不要になった精細胞などを積極的に取り込み、分解する食作用（貪食作用）も有しています。これは、精巣内の環境を清潔に保ち、精子形成を円滑に進めるために重要です。
血液精巣関門の形成: セルトリ細胞の間には、血液精巣関門と呼ばれる特殊な構造が形成されています。これは、血液中の有害物質が精巣内に侵入するのを防ぎ、精子形成を保護するバリアの役割を果たしています。この関門は、セルトリ細胞同士の密着結合によって作られています。
ホルモン分泌: セルトリ細胞は、インヒビン、トランスフェリン、セルロプラスミンなどの様々なホルモンを分泌します。これらのホルモンは、精子形成の調節や、生殖機能の維持に重要な役割を果たしています。特にインヒビンは、脳下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌を抑制することで、精子産生のフィードバック制御に関与しています。

セルトリ細胞と疾患

セルトリ細胞の機能異常は、不妊症など様々な生殖器疾患に関与している可能性が示唆されています。また、セルトリ細胞腫瘍（セルトリ細胞腫）といった、セルトリ細胞から発生する悪性腫瘍も存在します。

まとめ

セルトリ細胞は、精子形成を支える多様な機能を有する細胞です。精子の生成、成熟、放出、そして生殖機能の調節に重要な役割を担い、男性の生殖にとって欠かせない存在です。今後の研究によって、セルトリ細胞の機能解明がさらに進み、不妊症などの治療法開発に繋がる可能性も期待されます。

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