滑面小胞体

滑面小胞体（Smooth Endoplasmic Reticulum: sER）

滑面小胞体（かつめんしょうほうたい、英: smooth-surfaced endoplasmic reticulum, sER）は、細胞内に存在する小胞体の一種であり、その特徴はリボソームが付着していない点にあります。リボソームが付着している粗面小胞体とは異なり、滑面小胞体は通常、細管状の網目構造を形成しています。

構造と分布

滑面小胞体は、粗面小胞体とゴルジ複合体シス網との移行領域、あるいは粗面小胞体と連続する部位に存在しています。細胞の種類によってその分布や量が異なり、特定の細胞では特に豊富に見られます。たとえば、ステロイドホルモンを産生する細胞、肝臓の細胞（肝細胞）、骨格筋や心筋、胃底腺壁細胞、精巣上体の上皮細胞などで、滑面小胞体の発達が顕著です。

機能

滑面小胞体は、細胞内で多様な重要な役割を担っています。

1. 脂質合成: トリグリセリド、コレステロール、ステロイドホルモンなどの脂質成分の合成に関与しています。これらの脂質は、細胞膜の構成要素であったり、ホルモンとして細胞間の情報伝達に使われたりします。

2. カルシウムイオン（Ca2+）貯蔵: 細胞内のカルシウムイオン濃度を調節するために、カルシウムイオンを貯蔵する役割があります。カルシウムイオンは、筋肉の収縮、神経伝達、細胞内シグナル伝達など、多様な細胞活動に関与しています。

細胞種ごとの特徴

• - ステロイド産生細胞: 副腎皮質や卵巣などのステロイドホルモンを合成する細胞では、滑面小胞体が非常に発達しており、ホルモン合成の場として重要な役割を果たしています。
• - 肝細胞: 肝臓では、薬物や毒素の代謝、解毒に関与する酵素が滑面小胞体に存在し、肝臓の解毒作用に貢献しています。また、糖新生にも関わっています。
• - 筋細胞（骨格筋、心筋）: 筋細胞では、筋小胞体と呼ばれる特殊な滑面小胞体が、カルシウムイオンの貯蔵と放出を制御し、筋肉の収縮と弛緩を円滑に行う上で重要です。
• - 胃底腺壁細胞: 胃酸を分泌する胃底腺壁細胞では、滑面小胞体が胃酸分泌に関わる機能をサポートしています。
• - 精巣上体の上皮細胞: 精巣上体の上皮細胞では、精子の成熟や貯蔵に関わる機能をサポートするために、滑面小胞体が存在しています。

まとめ

滑面小胞体は、細胞内の脂質代謝やカルシウムイオン調節に関わる重要な細胞小器官であり、その機能は細胞の種類によって多様性に富んでいます。細胞の生理機能において不可欠な役割を果たしており、その理解は生物学の様々な分野で重要です。

参考文献

• - 日本獣医解剖学会編集　『獣医組織学 改訂第二版』　学窓社　2003年　ISBN 4873621135

関連項目

• - 細胞小器官

外部リンク

• - 滑面小胞体 - 脳科学辞典

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