セルビア語版ウィキペディア

セルビア語版ウィキペディアは、多言語オンライン百科事典プロジェクト「ウィキペディア」のセルビア語版として、2003年2月16日に産声を上げました。2023年現在、22万を超える記事数を誇り、セルビア語圏における知識の集積と共有に貢献しています。

表記の複雑性

セルビア語版ウィキペディアの特筆すべき点は、その表記の複雑さにあります。セルビア語では、キリル文字とラテン文字の2種類のアルファベットが用いられ、さらにエ方言とイェ方言という2つの方言が存在します。これは、エ方言キリル文字、イェ方言キリル文字、エ方言ラテン文字、イェ方言ラテン文字という4つの正書法が存在することを意味し、ウィキペディアの運営において大きな課題となります。

設立当初、セルビア語版ウィキペディアではキリル文字が使用され、エ方言とイェ方言のどちらも使用可能とされました。しかし、キリル文字とラテン文字の両方が広く普及している状況を踏まえ、両方の文字で利用可能にする試みが開始されました。初期にはBotを用いて全て記事を自動的に翻字する方法が採用されましたが、技術的な問題から中断されました。その後、中国語版ウィキペディアで用いられている手法を参考に、閲覧者が記事上部のタブで文字を切り替えられるソフトウェアが開発されました。また、他言語の記述など、翻字の対象とならない部分を区別するためのタグが導入されました。

キリル文字とラテン文字の翻字はおおむね成功しましたが、エ方言とイェ方言の変換はより複雑であり、未だ実現には至っていません。この問題を解決するには、エ方言とイェ方言を変換するための専用の辞書が必要となります。課題は残るものの、セルビア語版ウィキペディアは、セルビア語の複数の変種を並行して扱うという、先駆的な試みであると言えるでしょう。

コミュニティの活動

セルビア語版ウィキペディアのコミュニティは活発に活動しており、2005年2月15日からは、利用者がベオグラードで週1回の定期的な会合を開いています。これまでに100回を超える会合が開催され、参加者同士の交流や情報交換が行われています。2005年12月3日には、セルビアにおけるウィキメディア財団の国別協会が設立され、ウィキペディアの普及と発展を支援しています。

ボットによる記事生成

2006年には、フランスのコミューンに関する約1万件の記事がBotによって自動生成されました。しかし、これらの記事はセルビア語への翻訳が必要であり、その作業は遅々として進んでいません。Botによる大量の記事生成は、ウィキペディアの質を維持するという点で、議論を呼ぶこともあります。

セルビア語版ウィキペディアは、セルビア語圏における知識の普及と共有に貢献するとともに、言語と文化の多様性を尊重するプラットフォームとして、今後も発展していくことが期待されます。

関連項目:
セルビア語
セルビア・クロアチア語
クロアチア語
ボスニア語
モンテネグロ語
セルビア・クロアチア語版ウィキペディア
クロアチア語版ウィキペディア
ボスニア語版ウィキペディア

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