セルビア鉄道

セルビア鉄道：セルビアの鉄道輸送を担う動脈

セルビア鉄道（Železnice Srbije）は、セルビア共和国における唯一の鉄道事業者として、旅客輸送と貨物輸送の両方を担う、国の経済と社会を支える重要なインフラです。その歴史は古く、19世紀にまで遡ります。

セルビア鉄道の歴史

セルビアにおける鉄道の黎明期は、1854年に開通した馬車鉄道、オラヴィツァ・バジアシュ鉄道に始まります。これは、当時のオーストリア＝ハンガリー帝国領であったバナト地方で、帝立王立オーストリア国鉄によって建設されました。蒸気機関車による運行は1856年に開始され、鉄道輸送の幕開けとなりました。

セルビア国有鉄道が正式に発足したのは1884年。ミラン1世の布告によって設立され、同年8月23日には、初の王室列車がベオグラードからニシュへ向けて運行されました。この年が、セルビア鉄道の正式な創立年とされています。

その後、1970年にはベオグラード・シド間で初の電化が行われ、近代化が進められました。しかし、20世紀後半には、ユーゴスラビア崩壊に伴う内戦やNATO軍による空爆、国連制裁などにより、鉄道網は大きな打撃を受けました。

ユーゴスラビア時代はユーゴスラビア鉄道の一部として運営されていましたが、連邦崩壊後はセルビア独自の鉄道として再出発。近年では、EUの支援や外国からの融資を受け、老朽化した施設の改修や路線の近代化が進められています。特に、汎ヨーロッパ回廊の一部である区間の近代化は、国際輸送の効率化に貢献しています。

2011年には国営企業から民営化され、持株会社体制へと移行。インフラ管理、資産管理、旅客輸送、貨物輸送の4つの事業子会社が、それぞれの分野で事業を展開しています。

セルビア鉄道の輸送

セルビア鉄道は、国内輸送はもとより、国際輸送においても重要な役割を担っています。ベオグラードを起点として、モンテネグロのバール、ヴェネツィア、ミュンヘン、テッサロニキ、ブダペスト、キエフ、モスクワといったヨーロッパの主要都市を結ぶ国際列車が運行されています。

また、ベオグラード首都圏では、コミュータ鉄道網「ベオヴォズ（Beovoz）」を運行し、都市鉄道「BG Voz」の運行も担当。首都圏の通勤・通学輸送を支えています。

セルビア鉄道の車両

セルビア鉄道では、様々な種類の電気機関車、ディーゼル機関車、電車、気動車が使用されています。

電気機関車
441系・444系：スウェーデンのASEA社のライセンスを得て、Mašinska Industrija Niš (MIN)社とKONČARグループが共同で製作した主力車両。
461系：ASEA社のライセンスに基づきルーマニアで製作された電気機関車で、主に貨物輸送に使用。
ディーゼル機関車
GM製の645系・661系・664系・666系、MIN社製の741系・742系・734系、Macosa社製の644系、Đuro Đaković Company社製の662系・643系・642系など、多種多様なディーゼル機関車が使用されています。
電車
412系：リガ車両製作工場製の電車が主力。
413系：スイス製のFLIRT3を導入。2014年9月に最初の編成が到着。
気動車
710系・712系・812系など、ローカル線向けのディーゼルカーが使用されています。
* 711系：ロシア・Metrovagonmash社製の気動車で、ベオグラード - ヴルシャツ間で運行。

セルビア鉄道は、長年の歴史の中で様々な困難を乗り越え、セルビアの発展に貢献してきました。近年では、路線の近代化や新型車両の導入など、更なる発展を目指しています。これからもセルビアの経済と社会を支える重要な役割を担っていくことでしょう。

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