セレン整流器

セレン整流器について

セレン整流器（セレンせいりゅうき）は、セレンの半導体としての特性を活用した整流デバイスです。セレンはP型半導体の特性を持ち、多結晶のセレン膜を基板上に形成することで、その特性を最大限に引き出します。この膜の上に、カドミウムやビスマスからなる低融点合金を接合することで、金属と半導体間にショットキー障壁が形成され、整流機能を果たすことができます。

特性と動作

セレン整流器の特性は、現在広く使用されているショットキーバリアダイオードと似ています。逆耐圧は低く、約30 V程度であり、逆回復時間がないため、比較的高速に動作します。ただし、動作時の容量成分はショットキーバリアダイオードよりも大きくなることがあります。そのため、通常は複数の素子を直列に接続して使用されます。

過去の用途

1950年代から60年代にかけて、セレン整流器は主にテレビ受像機の電源供給に広く使用されていました。当時は、セレンやカドミウムといった金属が整流器に利用されていましたが、これらは有害物質であることから、1970年代に入ると、より小型で性能も優れたシリコンダイオードに置き換えられました。その結果、セレン整流器の生産は次第に終了していきました。

技術的背景

セレン整流器が広く使用されるようになった背景には、その逆耐圧の特性が影響しています。特に、自動車のバッテリー電圧が12Vに設定された理由には、セレン整流器の耐圧が大きな役割を果たしたとされています。

子どもたちにとっての存在

セレン整流器が使用されていた時代には、子どもたちにとっても身近な存在でした。特に、スロットレーシングや鉄道模型のパワーパックとしてよく利用されており、鉄道模型の愛好者たちは高価な市販品に代わる自作パーツを求めて、専門店で簡単に入手することができました。

現在の状況

現在では、セレン整流器の生産はほとんど行われていませんが、その普及のほどは記憶に新しいものです。生産数が多かったため、まだ多くのジャンク品の中に橙色や黄緑色の多層板状のセレン整流器が見られることがあります。これらの部品は、過去の技術の名残として、また歴史的な価値を持つものとして、多くの人々に親しまれています。

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