セントジョンの鐘

「セントジョンの鐘」：現代ロンドンを舞台にしたドクター・フーの都市型スリラー

2013年3月、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』シリーズ7の後半を飾るエピソードとして放送された「セントジョンの鐘」。11代目ドクター（マット・スミス）と、新たなコンパニオンとなるクララ・オズワルド（ジェナ・ルイーズ・コールマン）の冒険が描かれる、現代ロンドンを舞台にしたスリリングな物語です。

物語のあらすじ

1207年から2013年へとタイムトラベルしたドクターは、過去2回出会っては死なせてしまったクララから電話を受けます。3度目の出会いとなるクララとの邂逅直後、ドクターは謎の女性キズレットと、彼女を操るグレート・インテリジェンスの陰謀に巻き込まれます。彼らは世界中のWi-Fiネットワークを悪用し、サーバーズと呼ばれるロボットを通して人類の魂をデータクラウド上にアップロードするという恐るべき計画を実行しようとしていました。

都市を舞台としたスリラーとして設計された本作は、「どこにでもある日常の物が、悪意によってどのように凶器と化すのか」というテーマを鮮やかに描き出しています。ドクターとクララは、現代社会のインフラを悪用した異星人の侵略を阻止するため、知略と勇気を振り絞って戦いを挑むのです。

クララ・オズワルド：新たなコンパニオンの登場

「セントジョンの鐘」は、ジェナ・ルイーズ・コールマン演じるクララ・オズワルドが、11代目ドクターの正式なコンパニオンとして初めて登場するエピソードでもあります。それ以前にも何度かドクターと出会っていたクララですが、本作では彼女自身の謎めいた過去や、ドクターとの関係性が深く掘り下げられます。クララの登場によって、ドクター自身の冒険にも新たな息吹が吹き込まれ、物語に奥行きが加わります。

過去作との繋がりと伏線

本作は、シリーズを通して散りばめられた伏線や、過去エピソードとの繋がりを巧みに織り交ぜています。例えば、クララが生徒に貸した小説は、ドクターの旧コンパニオンであるエイミー・ポンドが執筆した作品であるなど、さりげなく過去の物語との関係性が示唆されています。また、グレート・インテリジェンスは、以前のエピソード「スノーメン」にも登場しており、本作ではその後の活動や、ドクターとの過去の遭遇が明かされています。こうした過去のエピソードとの繋がりは、物語への理解を深め、視聴者を楽しませる要素となっています。

製作の裏側

脚本を担当したスティーヴン・モファットは、身近な物事を怪奇な存在として描く『ドクター・フー』の伝統を踏襲し、現代社会に不可欠な存在となったWi-Fiを、物語のキーとなる要素として選びました。また、プロデューサーのマルス・ウィルソンは、現代ロンドンを舞台にした都市型スリラーという本作のスタイルを提案し、そのアイデアはジェームズ・ボンドや『ボーン・アイデンティティー』といった作品からインスピレーションを得ています。

撮影はロンドンの象徴的な場所で行われ、ウェストミンスター橋やテムズ川沿いのダイナミックなアクションシーンは、本作の見どころの一つとなっています。ロケ地選定においても、キズレットの本拠地であるザ・シャードとの位置関係が考慮されるなど、細部へのこだわりが感じられます。

放送と反響

「セントジョンの鐘」は、イギリス国内で844万人の視聴者数を記録し、高い人気を博しました。批評家の評価も高く、多くのメディアで肯定的なレビューが掲載されています。特に、クララのキャラクターや、スミスとコールマンの演技は高い評価を得ています。一方で、プロットや敵役のデザインについては、賛否両論があるのも事実です。しかし、全体として「セントジョンの鐘」は、『ドクター・フー』シリーズにおける重要なエピソードとして高く評価されています。

まとめ

「セントジョンの鐘」は、現代社会の技術を巧みに活用したスリリングな展開、過去エピソードとの繋がり、そして魅力的なキャラクターたちが織りなす、見応えのある作品です。Wi-Fiを悪用した陰謀という斬新なアイデアと、現代ロンドンの風景が融合した本作は、『ドクター・フー』シリーズの中でも特に記憶に残るエピソードとして、多くのファンに愛され続けています。

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