センニンソウ属

センニンソウ属（クレマチス）について

センニンソウ属 Clematis は、キンポウゲ科に属する植物の一群で、約300種が世界中に分布しています。つる性のものがよく知られていますが、直立する草本もあり、その形態は多様です。美しい花を咲かせるものが多く、園芸用に栽培されることもありますが、有毒植物であるという側面も持ち合わせています。

特徴

形態: つる性のものが多いですが、半低木や多年草も存在します。つるは木質化することもあり、茎には節があり、節ごとに葉が対生します。ただし、幼い時期には互生することもありますが、成長するにつれて対生に移行します。葉は単葉の場合もありますが、通常は3出複葉か羽状複葉で、柄があります。つる性のものは、葉柄を曲げて他のものに絡みつくようにして成長します。
花: 花は茎の先端や葉腋から単独で咲くこともありますが、多くは円錐花序や集散花序を形成します。花は両性花であることが多いですが、単性花の場合もあります。萼片が花弁のように発達し、4枚、6枚、8枚とありますが、通常は奇数にはなりません。蕾の状態では敷石状に並び、互いに重なり合いません。花弁には蜜腺がなく、これはキンポウゲ科としては例外的な特徴です。雄しべと雌しべは多数あり、雌しべからは長い花柱が伸びます。
果実: 果実は痩果で、花柱は成熟後も残り、羽毛状の突起となります。これにより、果実の中心から多数の羽毛状の突起が放射状に伸びる独特の形状になります。

分布と種

センニンソウ属の植物は、ほぼ世界中に分布していますが、特に東アジアの温帯地域に多く見られます。また、熱帯地域にも分布しており、これはキンポウゲ科の他の属と比較して珍しい特徴です。

分類

センニンソウ属は、キンポウゲ科の中でも特異な特徴を持つグループです。茎が長く伸びて無限成長すること、葉が対生であること、萼が4、6、8枚であること、開花前の蕾が敷石状であることなどが挙げられます。これらの特徴から、センニンソウ属を単独でセンニンソウ連として分類する説もあります。ただし、これらの特徴は必ずしもこの属特有のものではなく、他の属にも見られるものもあります。

近縁の属としては、ヒマラヤ産のArchiclematisやインドから東南アジアに分布するNaraveliaがあります。

下位分類

センニンソウ属は多くの種を含むため、亜属や節に細分化されています。以下に代表的な節を紹介します。

*オオクワノテ節 sect. Meclatis**: 羽状複葉で、小葉に鋸歯があり、花は黄色。アフリカ、西アジア、中央アジアなどに分布。
*カザグルマ節 sect. Viticella**: つる性で、葉は複葉、花は大きく上向きに咲きます。クレマチスの園芸品種の多くがこの節に属します。
*クサボタン節 sect. Tubulosa**: 茎は直立し、花は鐘状で下向きに咲きます。日本にも自生種があります。
*クロバナハンショウヅル節 sect. Viorna**: 葉は単葉のものもあり、花は鐘形で下向き。北半球に広く分布し、観賞用の種も多いです。
*シロバナハンショウヅル節 sect. Cheiropsis**: 葉は3出複葉が多く、花は杯状で平らに開きます。地中海沿岸から日本にかけて分布。
*センニンソウ節 sect. Flammula**: 茎は直立またはつる性で、花は上向きに平らに開きます。ユーラシアと北アフリカに分布。
*タカネハンショウヅル節 sect. Campanella**: 葉は複葉で、花は鐘状で俯きに咲きます。東アジアに分布。
*ハンショウヅル節 sect. Bebaeanthera**: 葉は3出複葉で、花は鐘状で垂れ下がって咲きます。日本に分布。
*ボタンヅル節 sect. Clematis**: 葉は複葉で、花は白く上向きに平らに開きます。ユーラシア、アフリカに分布。
*ミヤマハンショウヅル節 sect. Atragene***: 葉は3出複葉で、花は鐘形で俯きに咲きます。北半球の寒冷地に分布。

日本の種

日本には、センニンソウ、ボタンヅル、ハンショウヅル、クサボタンなど20種以上のセンニンソウ属の植物が自生しています。

毒性と利用

センニンソウ属の植物にはプロトアネモニンという有毒成分が含まれており、皮膚に付くと水疱や炎症を引き起こすことがあります。しかし、この毒性を利用して薬草として用いられることもあり、中国ではサキシマボタンヅルなどが、日本ではセンニンソウなどが利用されています。また、民間療法として扁桃腺炎の治療に葉を利用することもありますが、推奨される方法ではありません。若芽を食用とする記述もありますが、危険が伴うため推奨できません。

観賞用として

センニンソウ属の植物は、美しい花を観賞するために、多くの園芸品種が作られています。特にカザグルマやテッセンを元にした品種は、19世紀にヨーロッパで広く栽培されるようになりました。日本でも、これらの園芸品種や、自生種が栽培されています。

この解説は、センニンソウ属の多様な側面を網羅し、その特徴、分布、分類、毒性、利用、観賞価値について詳細に説明しています。

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