クレマチス

クレマチス：蔓性植物の女王

クレマチス（Clematis）は、キンポウゲ科センニンソウ属に分類される植物の総称です。学術的にはセンニンソウ属の植物全体を指しますが、園芸の世界では、特に花が大きく観賞価値の高い蔓性の多年草をクレマチスと呼んでいます。その美しい姿から「蔓性植物の女王」とも称され、世界中で愛されています。

クレマチスの特徴

クレマチスの特徴は、その多様な花形と色彩です。原種は約300種類存在し、日本にもカザグルマやハンショウヅルなどが自生しています。原種の花は比較的小さく色も限られますが、園芸品種は一重咲き、八重咲き、万重咲きなど、様々な咲き方があり、花色も豊富です。

花と葉

クレマチスの花は、花弁を持たず、花弁のように見えるのは萼が変化したものです。種子は先端に鞭状の突起があり、綿毛が生えています。葉は三出複葉または二回三出複葉で、蔓性の種類では葉柄が他の植物に巻き付き、茎を固定します。

原種

日本には、ボタンヅル、センニンソウ、ハンショウヅル、カザグルマなどの原種があります。ボタンヅルやセンニンソウは小さな白い花を多数つけますが、カザグルマのように大柄で平らに開く花が観賞用として人気があります。

園芸種としての歴史

19世紀に日本のカザグルマがヨーロッパに紹介されたことが、クレマチスの園芸品種改良の始まりです。その後、中国のテッセンや、その他の原種との交配によって数多くの園芸品種が生まれました。現在では、2000種を超える交配品種が存在すると言われています。

日本へは16世紀にテッセンが渡来し、江戸時代にはテッセンやカザグルマを元にした園芸品種が作られていました。

園芸品種の利用

日本では大輪のクレマチスを鉢植えで楽しむのが一般的ですが、ヨーロッパでは修景に用いられることが多いです。クレマチスは、他の植物に絡みついて成長する性質から「愛」を象徴するとも言われ、日陰を作ることから「乙女の木陰の休憩所」などとも呼ばれています。

最近では、バラと組み合わせてオベリスクやアーチに絡ませたり、壁面を這わせる仕立て方が人気で、イングリッシュガーデンの主役として活躍しています。

クレマチスの分類

クレマチスは、その開花習性によって大きく3つのグループに分類されます。

旧枝咲き: 前年のつるに花を咲かせるタイプ（モンタナ系、パテンス系など）。
新旧両枝咲き: 前年と新しく伸びたつるの両方に花を咲かせるタイプ（フロリダ系、ラヌギノーサ系など）。
新枝咲き: その年に伸びたつるに花を咲かせるタイプ（ビチセラ系、ジャックマニー系など）。

品種改良が進んだ結果、これらの系統間の境界線は曖昧になりつつあります。

主な系統

早咲き大輪系: パテンス系、フロリダ系など。4～5月に開花。旧枝咲きまたは新旧両枝咲き。
遅咲き大輪系: ラヌギノーサ系、ジャックマニー系など。6月頃から秋に開花。新枝咲き。
モンタナ系: 4～5月に小花を多数咲かせる。旧枝咲き。
テキセンシス系: テキセンシスを原種とする。チューリップ形やベル形の花が特徴。新枝咲き。
インテグリフォリア系: 木立ち性または半つる性。新枝咲き。
ビチセラ系: 初夏から晩秋まで小花を多数咲かせる。新枝咲き。
ヴィオルナ系: つぼ形またはベル形の花。春遅くから秋にかけて開花。新枝咲き。
シルホサ系: 冬咲き品種。小輪で下向きに咲く。
アーマンディ系: 常緑品種。3月ごろから開花。

注意点

クレマチスの茎や葉の汁には毒性があり、皮膚に触れるとかぶれたり、皮膚炎を起こすことがあります。また、クレマチスには「乞食の植物」という別名があり、これは毒性を利用して、かつて乞食がわざと自分の体に傷をつけ、そこに葉を擦り込み、同情を引こうとしたためです。

まとめ

クレマチスは、その美しい花と多様な品種で、ガーデニング愛好家から絶大な人気を集めています。つる性なので、フェンスや壁面を彩るだけでなく、鉢植えや切り花としても楽しめます。品種ごとの特性を理解し、適切な手入れを行うことで、長く美しい花を楽しむことができます。

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