セヴンス・スター

ブラック・サバス『セヴンス・スター』徹底解説

『セヴンス・スター』（Seventh Star）は、ブラック・サバスが1986年に発表した12作目のスタジオ・アルバムです。しかし、その制作過程は複雑で、単なるブラック・サバスのアルバムとは言い切れない背景を持っています。

ソロ・プロジェクトからバンド名義へ

当初、このアルバムはトニー・アイオミの初のソロ・アルバムとして計画されていました。彼はグレン・ヒューズ、ロブ・ハルフォード、ロニー・ジェイムス・ディオといった複数のシンガーを起用することを考えていましたが、最終的にはグレン・ヒューズのみが参加することになりました。さらに、ブラック・サバスのサポート・メンバーであったジェフ・ニコルス、アメリカ人プレイヤーのデイヴ・スピッツとエリック・シンガーが参加。しかし、アメリカ盤の発売権を持っていたワーナー・ブラザース・レコードやマネージメントの判断により、「ブラック・サバス featuring トニー・アイオミ」という名義で発売されることになりました。

ジェフ・フェンホルトの存在

グレン・ヒューズ加入前には、ジェフ・フェンホルトという新人シンガーが参加していました。しかし、彼は解雇され、その後テレビ伝道師に転身。ブラック・サバスの名前を自身の売名行為に利用したとされています。

グレン・ヒューズの脱退とレイ・ギランの加入

本作に伴う北米ツアーの開始からわずか5日後、グレン・ヒューズがバンドを脱退してしまいます。後任としてレイ・ギランがツアーに参加。アイオミはその後、ギランを含むラインナップでブラック・サバス名義のアルバム『エターナル・アイドル』の制作に入りますが、ギランとスピッツはレコーディング中に脱退してしまいました。

デラックス・エディション盤

2010年には、ボーナス・トラックとボーナス・ディスクを追加したデラックス・エディション盤がヨーロッパで発売されました。ボーナス・ディスクには、レイ・ギラン加入後に行われた1986年6月2日のロンドン公演のライブ音源が収録されています。2011年にはデラックス・エディション盤が日本でも発売され、1986年当時の日本盤LPの帯を元にした帯が付されました。

収録曲について

収録曲は全てトニー・アイオミの作曲ですが、作詞にはジェフ・ニコルス、ジェフ・グリックスマン、グレン・ヒューズも協力しています。

1. イン・フォー・ザ・キル - "In for the Kill"
2. ノー・ストレンジャー・トゥ・ラヴ - "No Stranger to Love"
3. ターン・トゥ・ストーン - "Turn to Stone"
4. スフィンクス - "Sphinx (The Guardian)"
5. セヴンス・スター - "Seventh Star"
6. デンジャー・ゾーン - "Danger Zone"
7. 運命の輪 - "Heart Like a Wheel"
8. アングリー・ハート - "Angry Heart"
9. イン・メモリー - "In Memory..."

デラックス・エディション盤には、オルタナティヴ・ヴァージョンの「ノー・ストレンジャー・トゥ・ラヴ」がボーナス・トラックとして収録されています。また、ディスク2には、レイ・ギランが参加したライブ音源が収録されています。

参加ミュージシャン

トニー・アイオミ - ギター
グレン・ヒューズ - ボーカル
デイヴ・スピッツ - ベース
エリック・シンガー - ドラムス
ジェフ・ニコルス - キーボード
ゴードン・コプリー - ベース (on "No Stranger to Love")
* レイ・ギラン - ボーカル（デラックス・エディション盤ディスク2のみ）

このように、『セヴンス・スター』は、様々な紆余曲折を経て完成した、ブラック・サバスの歴史の中でも異色の作品と言えるでしょう。

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