トニー・アイオミ

トニー・アイオミ：ヘヴィメタルのレジェンド

トニー・アイオミ（1948年2月19日生まれ）は、イギリス・バーミンガム出身のミュージシャン、ギタリストであり、ブラック・サバスの創設メンバーとして世界的に知られています。183cmの長身を持つ彼は、独特のヘヴィでシンプルなリフと、抒情性を感じさせるサウンドで、ヘヴィメタル音楽史に大きな足跡を残しました。

ギターへの道：挫折と飛躍

当初はドラムを志望していましたが、金銭的な理由からギターに転向。右利き用のアコースティックギターを購入したのが、彼のギター人生の始まりでした。ザ・シャドウズの影響を受けながら、その後バーンズ製のTri-Sonic、フェンダー・ストラトキャスターとギターを買い替え、ブラック・サバス結成時にはギブソンSGスペシャルを使用するようになりました。しかし、彼自身の理想とする24フレット仕様のSGモデルをギブソン社に製作依頼したところ断られたため、以降はイギリスのギター職人ジョン・バーチが製作したカスタムモデルや、ジェィディー製のSGシェイプ・モデルを使用しています。アンプはレイニー製を長年愛用しており、マーシャルを使用していたのは80年代前半の一時期のみです。

悲劇と革新：指切断事故

アイオミの音楽人生において大きな転換点となったのが、板金工時代の事故です。プレス機械に手を挟まれ、右手の中指と薬指の先端を失うという重傷を負いました。左利きの彼は、右手の指が欠損したことでギター演奏が困難になりましたが、ベルギー人ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの演奏を聞き、彼の障害を克服した事実に勇気づけられました。

彼は、洗剤のプラスチック容器を溶かして作ったサックを指先に装着し、さらに弦のテンションを極限まで下げることで、少ない力で押弦できるよう工夫しました。この事故と工夫は、結果として彼独特の、低く潰れたようなサウンドを生み出すこととなり、後のヘヴィメタル・ギタリスト達に多大な影響を与えることになります。

ブラック・サバス：ヘヴィメタルの礎

バーミンガムで結成されたバンド「アース」は後に「ブラック・サバス」と改名。デビュー前にはジェスロ・タルに一時加入し、「ロック・アンド・ロール・サーカス」にも出演しましたが、レコーディングには参加せず、ブラック・サバスに戻っています。1970年のデビュー以来、彼はブラック・サバスの全アルバムに参加し、その重厚で独特のサウンドは、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルと共にヘヴィメタルというジャンルを確立する上で大きな役割を果たしました。特に70年代初期の作品では、彼の速弾きやブルース、50年代ロックンロールを思わせる演奏も聴くことができます。

ソロ活動と多様なコラボレーション

ブラック・サバスでの活動と並行して、アイオミはソロ活動も積極的に行っています。1986年には『セヴンス・スター』を発表。その後もグレン・ヒューズらとコラボレーションを重ね、2000年には初のソロアルバム『アイオミ』を発表し、デイヴ・グロール、ブライアン・メイ、ビリー・コーガン、オジー・オズボーンといった豪華ゲストを迎えています。さらに、フレディ・マーキュリー追悼コンサートへの出演や、ユーロビジョン・ソング・コンテストへの楽曲提供など、その活動は多岐に渡ります。

音楽的特徴

アイオミの音楽は、パワーコードを多用しながらも抒情性を併せ持ち、同じフレーズの繰り返しによって独特の緊張感と開放感を生み出しています。彼の作品には「何かに追われているような緊張感」と「矛盾するような開放感」が同居しており、この独特の雰囲気はブラック・サバス初期の作品、特に「ナショナル・アクロバット」「イントゥ・ザ・ヴォイド」「スノウブラインド」などに顕著に表れています。

影響と評価

彼のヘヴィでシンプルなリフ、そして独特の音色は、数多くのヘヴィメタル・ギタリストに多大な影響を与え、その創造力は高く評価されています。「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」においても、2003年には86位、2011年には25位にランクインしています。彼の音楽は、ヘヴィメタルというジャンルを定義する上で不可欠な要素であり、その功績は音楽史に永遠に刻まれるでしょう。

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