セールレーシ・アンドラーシュ

概要

セールレーシ・アンドラーシュ（ハンガリー語: Szőllősy András）は、20世紀後半に活躍したハンガリーの重要な作曲家であり、音楽学者です。1921年 2月27日に生まれ、2007年 12月6日に86歳でその生涯を閉じました。特に、同国の偉大な作曲家バルトーク・ベーラの作品と音楽関係論文を体系的に整理し、現在広く参照されている「Sz番号」（セールレーシ作品番号）を付与した業績で国際的に知られています。教育者としてもリスト音楽院で長年にわたり後進の指導にあたりました。

生涯と教育

アンドラーシュ・セールレーシは、第一次世界大戦後にハンガリーからルーマニア領となったトランシルヴァニア地方のサースヴァーロシュ（現在のルーマニア、オラシュティエ）で誕生しました。高等教育はブダペスト大学で受け、当初はハンガリー文学やフランス文学といった人文科学を学びました。その後、音楽への道を本格的に進み、リスト音楽院に入学。ここでは、ハンガリーを代表する作曲家であり教育者でもあったゾルターン・コダーイに師事し、音楽の基礎から作曲技法に至るまで深く学びました。また、ヴィシュキ・ヤーノシュにも作曲を師事しています。さらに視野を広げるため、イタリアのサンタ・チェチーリア国立アカデミアでも学び、イタリアの作曲家ゴッフレード・ペトラッシのもとで研鑽を積みました。音楽学者としての素養もこの頃から培われ、1943年にはコダーイに関する論文をブダペスト大学に提出し、博士号を取得しています。

音楽学者・教育者としての活動

博士号取得後、セールレーシはハンガリー音楽界の中心人物として活動を開始します。1950年からは、母校であるリスト音楽院の教壇に立ち、音楽史や音楽理論を教えて多くの才能を育成しました。この教育者としてのキャリアは、1988年まで約40年間に及びました。教育活動と並行して、音楽学者としても精力的に活動します。その中でも特筆すべき功績が、バルトーク・ベーラの作品目録の整理です。バルトークの膨大な作品群と、散逸しがちだった音楽学的な著作を網羅的に調査し、年代順に整理した上で「Sz番号」という独自の作品番号体系を確立しました。この番号はバルトーク作品研究において不可欠なものとなり、世界中の音楽学者や演奏家によって広く利用されています。1953年には、師であるコダーイの作品にも作品番号を付与する作業を行いました。さらに、1967年にはバルトークの著作を集成した全集の編纂を手がけるなど、ハンガリー音楽史における重要な資料の整理・保存に大きく貢献しました。バルトークやコダーイのほか、アルテュール・オネゲルなど、20世紀の主要な作曲家に関する多数の著作も発表しています。

作曲家としての活動

セールレーシは音楽学者としての輝かしい業績に加え、作曲家としても活発に活動を展開しました。クラシック音楽の分野で管弦楽曲、室内楽曲などを手掛けたほか、劇音楽や映画音楽の作曲も行い、その創作は多岐にわたりました。彼の作品は、ハンガリーの伝統音楽を基盤としつつ、20世紀のモダンな響きを取り入れた独自の世界を築いています。

受賞・栄典

セールレーシ・アンドラーシュの多岐にわたる功績は、国内外で高く評価されました。1970年には自身の代表作の一つである「弦楽のための協奏曲第3番」がユネスコ国際作曲家会議賞を受賞し、国際的な作曲家としての評価を確立しました。ハンガリー国内では、1971年にエルケル賞を受賞。そして、1985年にはハンガリーの文化人にとって最高の栄誉とされるコシュート賞を受賞し、国家的な功績が認められました。さらに、国際的な評価は続き、1987年にはフランス政府から芸術文化勲章コマンドゥール章が授与されています。

晩年

長年にわたりハンガリー音楽界に貢献したセールレーシは、2007年 12月6日、居住していたブダペストにて86歳で静かに息を引き取りました。

彼の業績は、音楽学者としてバルトーク研究に決定的な貢献を果たした点、教育者として後進を育成した点、そして作曲家として独自の作品世界を構築した点など、多角的な側面から評価されています。特にSz番号によるバルトーク作品の整理は、彼の名前を音楽史に不朽のものとしています。

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