ゼア・イズ・オールウェイズ・ワン・モア・タイム

ゼア・イズ・オールウェイズ・ワン・モア・タイム

『ゼア・イズ・オールウェイズ・ワン・モア・タイム』（There Is Always One More Time）は、ブルース界の巨匠B.B.キングが1991年に発表したスタジオ・アルバムです。キングの円熟期に制作された本作は、多彩な才能を持つミュージシャンたちとの協力を通じて生み出されました。

制作の背景

本作に収録された楽曲の多くは、ジャズ・ピアニストとしても名高いジョー・サンプルと作詞家のウィル・ジェニングスの共作によるものです。この二人は以前にも、1978年のアルバム『ミッドナイト・ビリーヴァー』や1979年の『テイク・イット・ホーム』といったB.B.キングの作品に楽曲を提供しており、長年にわたりキングの音楽性を支えてきた重要なコラボレーターと言えます。

また、ギタリストのアーサー・アダムスも本作に2曲を提供しています。アダムスは1970年にブルーサム・レコードからデビューしたミュージシャンであり、後年発表した自身のアルバム『Back on Track』（1999年）では、B.B.キングをゲストに迎えるなど、キングとは深い交流がありました。

アルバムのタイトル曲「There Is Always One More Time」は、著名なソングライターであるドク・ポーマスの楽曲をカヴァーしたものです。ポーマスは本作の発表前にこの世を去っており、B.B.キングはこのアルバム全体を彼に捧げています。キングとポーマスの間にも、音楽を通じた特別な絆があったことが伺えます。

反響と評価

本作は、全米のアルバム総合チャートであるBillboard 200へのランクインは逃しましたが、ビルボード誌のR&Bアルバムチャートにおいては最高位76位を記録しました。

音楽批評家からの評価も得ています。特に、音楽レビューサイト「オールミュージック」のスコット・ヤナウは、本作に5点満点中4点の高評価を与えています。ヤナウはレビューの中で、「収録曲の大部分はキャッチーで、一度聴いたら忘れられない親しみやすさを持っている」と指摘しました。さらに、楽曲の歌詞について「知的で思慮深く、B.B.キングのブルース・スタイルに見事に合致している」と称賛。キング自身のパフォーマンスに関しても「彼の歌声は絶好調であり、その表現力は円熟の域に達している」と高く評価しています。これらの評価は、本作が単なるブルースの枠にとどまらず、幅広い層にアピールする普遍的な魅力を持っていたことを示唆しています。

収録曲

本作には以下の9曲が収録されています。特記がない限り、ジョー・サンプルとウィル・ジェニングスの共作による楽曲です。

アイム・ムーヴィング・オン - "I'm Moving On" – 4:16
バック・イン・L.A. - "Back in L.A." – 5:00
ザ・ブルース・カム・オーヴァー・ミー - "The Blues Come Over Me" – 5:13
フール・ミー・ワンス - "Fool Me Once" – 4:18
ザ・ロウダウン - "The Lowdown" – 4:11
ミーン・アンド・イーヴル - "Mean and Evil" (Arthur Adams) – 4:20
サムシング・アップ・マイ・スリーヴ - "Something Up My Sleeve" (Arthur Adams) – 4:28
ロール、ロール、ロール - "Roll, Roll, Roll" – 5:58
ワン・モア・タイム - "There Is Always One More Time" (Doc Pomus, Ken Hirsch) – 8:27

参加ミュージシャン

本作の録音には、B.B.キング自身に加えて、実力派のミュージシャンたちが多数参加しています。

B.B.キング: ボーカル、リードギター
マイケル・ランドウ: ギター
アーサー・アダムス: ギター
ジョー・サンプル: ピアノ
ニール・ラーセン: オルガン、キーボード
フレディ・ワシントン: ベース
ジム・ケルトナー: ドラムス
レニー・カストロ: パーカッション
ポーレット・ブラウン、ヴァレリー・ピンクストン＝メイヨー、バニー・ハル: バックグラウンド・ボーカル

これらのプレイヤーたちの貢献により、『ゼア・イズ・オールウェイズ・ワン・モア・タイム』は、B.B.キングの歌声とギターを中心に据えつつも、洗練されたサウンドプロダクションを持つ作品として完成されました。ブルースの伝統を踏まえつつ、より現代的な要素を取り入れた、キングのキャリア後期を代表する一枚と言えるでしょう。

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