ゼカリヤ書

『ゼカリヤ書』は、旧約聖書に収められた預言書の一つであり、ユダヤ教においては「後の預言者」に分類され、キリスト教においては十二小預言書の一つとして数えられます。この書は、伝統的に『ハガイ書』と『マラキ書』の間に配置され、14章から構成されています。比較的大きな分量を持つ小預言書であり、その内容は多岐にわたります。書名はこの書の中心人物であるゼカリヤに由来しますが、著者については様々な説があり、特定には至っていません。

ゼカリヤ書の著者に関する手がかりとして、エズラ記5章1節と6章14節に言及があります。これらの箇所では、「預言者ハガイとイドの子ゼカリヤ」という名前が登場し、彼らがエルサレムの再建を促したと記述されています。しかし、ゼカリヤ書1章1節では、ゼカリヤがイドの孫であると記されており、両者の記述には矛盾が見られます。この矛盾について、列王記下9章に「子」を「孫」の意味で用いる例があることから、説明を試みる説も存在します。

内容

ゼカリヤ書の内容は、大きく分けて三つの部分に分類できます。

1. 幻に関する記述 (1:1–6:15)
この部分では、八つの幻と「新芽」に関する預言が記されています。これらの幻は、神がエルサレムとその民に対して抱く計画や、将来の希望を象徴的に表しています。
第1の幻: 赤い馬に乗った者が、他の3人の騎手と共に立っており、エルサレムに憐れみが示され、神殿が再建されるという保証が与えられます。
第2の幻: ユダを追い散らした四本の角が、四人の職人によって打ち砕かれる様子が描かれます。
第3の幻: 測り縄を持った若者がエルサレムを測ろうとしますが、天使が都市の拡大と神の保護を予告します。
第4の幻: 大祭司ヨシュアの汚れた衣が取り除かれ、新しい礼服が与えられます。
第5の幻: ゼカリヤは、二本のオリーブの木から油の供給を受ける七つの燭台を見ます。ゼルバベルが神の霊によって神殿を完成させるとの預言です。
第6の幻: 飛んで行く巻物は、盗みをする者や偽りの誓いを立てる者に対するのろいを表しています。
第7の幻: 「邪悪」という名の女がエファ升に入れられ、シナルに運ばれる様子が描かれます。
第8の幻: 二つの銅の山の間から四台の兵車が現れ、「新芽」という名の者が神殿を建て、王なる祭司として仕えると予言されます。

2. 災いと質問に関する記述 (7:1–8:23)
この部分では、エルサレムに臨んだ災いを記念する断食に関する質問がなされます。預言者は、過去の災いが不従順の罰であったことを指摘し、真に神に向かって行われる断食の重要性を説きます。また、将来のエルサレムが神の恵みを受けるであろうこと、多くの異邦人がエルサレムに集まるであろうことが預言されます。

3. 裁きとメシアに関する記述 (9:1–14:21)
この部分では、諸国民に対する裁き、メシアに関する預言、そして神の民の回復が述べられています。義にかなった謙遜な王がロバに乗ってエルサレムに入城するという預言は、メシアの到来を暗示しています。また、散らされた神の民がエジプトとアッシリアから連れ戻されること、エルサレムが重荷の石となることが記され、最終的に神が諸国民と戦い、エルサレムを保護することが預言されています。

ゼカリヤ書は、神の民に対する警告と希望を同時に伝える書物であり、その預言は後の時代のキリスト教神学においても重要な役割を果たしました。特に、メシアに関する預言は、イエス・キリストの生涯と重ね合わせて解釈されることが多いです。

関連項目

ゼカリヤ
ゼカリヤ書3章
* ゼカリヤ書9章

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