マラキ書

『マラキ書』は、旧約聖書に収められた預言書の一つであり、ユダヤ教では「後の預言者」、キリスト教では預言書に分類されます。預言書の中では最後に位置し、『ゼカリヤ書』の後に配置されています。キリスト教の十二小預言書の一つにも数えられ、全4章で構成されています。

本書の主な主題は、宗教儀式の厳守と雑婚の禁止です。預言者マラキは、当時の形式的になっていた礼拝のあり方を厳しく批判しました。書の前半部分では、裁判の判例のような議論形式が用いられ、神とイスラエルの民との間で質疑応答が繰り返されるという特徴があります。

マラキについて

筆者とされる「マラキ」という名前は、ヘブライ語で「私の使者」または「私の天使」という意味を持ちます。しかし、書物の中には筆者に関する情報が名前以外には一切記述されていません。また、「マラキ」という言葉が単純に「神の使者」を意味する可能性も指摘されています。タルムードには、マラキが「グレートシナゴーグ」の一員であったという記録がありますが、詳細な情報は不明です。

ジャン・カルヴァンは、「マラキ」をエズラの名字であると主張しましたが、これを裏付ける確固たる証拠はありません。また、捕囚からの帰還民であったモルデカイの仲間の一人であるとする説も存在します。しかし、これらの諸説を踏まえた上で、「マラキ」は特定の人名ではなく、匿名の預言者によって書かれたとするのが一般的な見解です。

歴史的背景

『マラキ書』が書かれた当時、イスラエルの民はバビロン捕囚から帰還したばかりで、市民権の保証がなく、厳しい状況に置かれていました。旱魃やイナゴの大量発生によって凶作が続き、周辺には敵対的な民族が居住していたため、生活は非常に困窮していました。そのような状況下で、民は神殿を再建しましたが、エルサレムは依然としてペルシア帝国の支配下にあり、ハガイ書で約束されたような栄光は実現していませんでした。

さらに、民の中の資産家たちは不正な手段で富を蓄積し、安易な離婚や異邦人との結婚が横行していました。祭司たちはこのような状況を正すどころか、むしろ助長していました。人々は平然と律法を破るようになり、祭司の堕落、軽率な雑婚や離婚、捧げ物の不履行などが社会全体に蔓延していました。

ネヘミヤがエルサレムを不在にしていた時期に、このような混乱した状況の中でマラキは預言を語り始めました。しかし、当時の民は神の言葉に鈍感になっており、預言に対して「どのように」と繰り返し問い返しました。神は、このような民衆を呼び覚ますために預言者を遣わしたのです。

預言者の役割

預言者とは、神の言葉を人々に伝える役割を担う存在です。マラキは、当時の社会の不正や堕落を指摘し、人々を神の道へと立ち返らせようとしました。彼の預言は、単なる未来予言にとどまらず、人々の心に神の教えを刻み込み、正義と道徳を促すものでした。

脚注・出典

マラキ書
マラキ書3章

関連項目

マラキ
マラキ書3章

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