ゼッケン (競馬)

競馬のゼッケン：競走馬を彩る背番号の歴史と役割

競馬において、ゼッケンは競走馬を識別するために欠かせないアイテムです。各馬に取り付けられるゼッケンは、単なる番号表示だけでなく、そのデザインや素材、使用方法に至るまで、競馬の歴史や文化を反映しています。本稿では、中央競馬と地方競馬におけるゼッケンについて、その詳細な仕様や変遷、背景にある物語を紐解きます。

中央競馬のゼッケン

競走ゼッケン

中央競馬で使用される競走ゼッケンは、縦510mm・横695mmの台形で、ポリエステル100%の不織布で作られています。環境への配慮から、競馬場から回収されたペットボトルをリサイクルした再生繊維が主に使用されています。ゼッケンには、馬番号、馬名、競走番号、競走名などが転写シートで貼り付けられます。国際競走では、片面に英文馬名が記載されることもあります。また、日本ダービーのゼッケンには、特別な装飾として縁に金色の刺繍が施されます。

2023年4月からは、競走馬トラッキングシステムで使用するGPS発信機を収納するためのポケットが左右に設けられました。これにより、レース中の競走馬の位置情報をリアルタイムで把握することが可能となり、レースの分析や安全性向上に役立てられています。

ゼッケンの歴史

かつて、ゼッケンの書体や寸法は競馬場ごとに異なっていました。しかし、1965年に規格の統一化が図られ、サイズや数字の書体などがほぼ同じ様式となりました。ただし、一部の競馬場や特定の重賞競走では、しばらくの間古いタイプのゼッケンが使用されていました。また、天皇賞で使用される紫紺地に金色の数字のゼッケンは、特別な存在として長年使用されてきました。

1983年のジャパンカップでは、初めて馬名入りのゼッケンが導入されました。これは外国馬が出走することによる特別措置でしたが、その後、1989年からはすべての重賞競走で馬名入りゼッケンが使用されるようになりました。1991年からは、一般競走を含むすべての競走で馬名入りゼッケンが採用され、現在に至っています。

ゼッケンの色と表記

中央競馬の競走で使用されるゼッケンの色は、競走のグレードによって異なります。GI級競走では紫紺、GII級競走では赤褐色、GIII級競走では深緑、特別競走では黒、一般競走では白が基本色として使用されます。ただし、一部例外も存在します。

国際競走では、スタンドから直線を見たときにカタカナ馬名が見えるように表記が工夫されています。2002年のジャパンカップが中山競馬場で代替開催された際には、表記がそのままだったため、スタンド側は英語表記馬名となっていました。

調教ゼッケン

美浦トレーニングセンターや栗東トレーニングセンターなどの施設では、調教時に専用のゼッケンが使用されます。これらのゼッケンは、競走用と同様にリサイクル素材で作られていますが、番号部分が縫い付けられるなど、耐久性に優れた作りとなっています。競走馬が登録された段階で固有の番号が割り当てられ、毎年秋に五十音順に再割り当てが行われます。また、馬の年齢や所属によってゼッケンの色が分けられています。

地方競馬のゼッケン

地方競馬では、各競馬場によってゼッケンの仕様が異なっています。大井競馬場では、JRAと同様にすべての競走で馬名入りゼッケンを使用していますが、JRAのゼッケンよりも上下の寸法が小さく作られています。その他の競馬場でも、重賞競走や特別な競走では馬名または競走名入りのゼッケンを使用するのが一般的です。

生地の色は枠番ごとに分けられていることが多く、材質も帆布製や化学繊維製など様々です。数字の字体も競馬場によって異なり、地域ごとの特色が見られます。ばんえい競馬では、重種馬の体格に合わせて特別なサイズのゼッケンが使用されています。

ゼッケンの製作とその後

中央競馬および一部の地方競馬の競走用ゼッケンは、長野県長野市にある身体障害者授産施設に委託されて製作されています。これは、利用者の自立支援の一環として行われています。使用済みのゼッケンは基本的に処分・リサイクルされますが、関係者が持ち帰ることも可能です。また、テレビ番組や雑誌のプレゼントとして提供されたり、オークションサイトなどで取引されることもあります。

ゼッケンは、競走馬を識別するだけでなく、競馬の歴史や文化、そして関係者の想いが込められた特別なアイテムなのです。

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