ゼニガタアザラシ

ゼニガタアザラシ（銭形海豹）

ゼニガタアザラシ（学名：Phoca vitulina）は、ゴマフアザラシ属に分類されるアザラシの一種です。日本の沿岸に定住する唯一のアザラシであり、その特徴や生態は注目に値します。

分布と生息地

このアザラシは、太平洋から大西洋にかけて広い範囲で分布しており、日本国内では主に北海道東部の襟裳岬、大黒島、歯舞群島などの岩場に生息しています。ゼニガタアザラシは日本に特有の亜種であり、他の亜種と区別されます。

種類の分類

ゼニガタアザラシは、生息地域に応じて以下の5つの亜種に分けられます。

• - P. v. concolor: 西大西洋亜種
• - P. v. richardii: 東太平洋亜種
• - P. v. stejnegeri: 西太平洋亜種（日本に生息）
• - P. v. vitulina: 東大西洋亜種
• - P. v. mellonae: カナダの河川や湖に生息する陸封型亜種

特に日本に生息する亜種P. v. stejnegeriは、他の亜種に比べ、体表の黒色部分が多くなっています。体色には暗色型と明色型がありますが、日本の個体はほとんどが暗色型です。この暗色の斑点模様がアザラシのシンボルとなっています。

形態的特徴

ゼニガタアザラシの体長は、メスが120-170 cm、オスが150-200 cm程度で、体重はメスが50-150 kg、オスが70-170 kgに達します。彼らは黒地に白い斑点があるため「ゼニガタアザラシ」と名付けられました。興味深いことに、新生児は大人と同じ模様で生まれます。

生態と行動

日本に生息するゼニガタアザラシは、海氷や流氷がない環境に適応しており、回遊魚や底生魚、タコ、エビ、イカなどを捕食します。性成熟はメスで4〜6歳で、一夫多妻の社会構造と考えられています。出産は5〜6月に行われ、寿命はオスで約20年、メスで約30年とされています。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、ゼニガタアザラシは「軽度懸念（Least Concern）」に分類されています。他の地域に比べ、日本では乱獲や生息地の消失、漁業活動による混獲が懸念されています。特に1960年代から70年代には個体数が大きく減少し、1950年代には5000頭以上いたとされる一方、1970年代には350頭まで減少しました。

1980年代以降は保護活動が進み、徐々に個体数が回復し始めています。2000年代にはゼニガタアザラシの個体数は900頭程度になり、2012年には絶滅危惧II類に引き下げられました。また、捕殺が行われなくなり、環境省の取り組みも進んでいます。

日本人との関係

2007年には北海道豊頃町でコロちゃんと呼ばれるゼニガタアザラシが現れ、見物人との事故が報告されました。ゼニガタアザラシは野生動物であるため、無遠慮に近づくことは危険です。このように、彼らとの関わりを理解し、適切な距離を保つことが大切です。

総じて、ゼニガタアザラシは日本の自然環境において重要な存在であり、その保全と生態に対する理解が今後の課題とされています。

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