ゼニス (時計)

ゼニス(Zenith S.A.)：スイスが誇る老舗時計ブランド

ゼニスは、1865年にジョルジュ・ファーヴル＝ジャコによって設立された、スイスのル・ロックルに拠点を置く時計ブランドです。創業以来、一貫して自社でムーブメントを含む時計の全工程を製造するマニュファクチュールとして知られています。

ゼニスの歴史

創業者ジョルジュ・ファーヴル＝ジャコは、1865年にル・ロックルに時計工場を設立。当初は「Manufacture de montres」という社名でしたが、1900年のパリ万博で新型懐中時計用ムーブメント「ゼニス」を出品し金賞を獲得。1911年に社名を「Fabriques des Montres Zenith SA」に変更しました。

ゼニスはパイロット用時計にも早くから注目し、1888年にフランス語の「Pilote」、1904年には英語の「Pilot」の名称を商標登録。文字盤に「Pilot」を冠することができる唯一のメーカーです。

昭和初期には、日本の国鉄にゼニスの懐中時計が正式採用され、「ゼニット」として親しまれました。1940年代には、クロノメーター級の高精度を誇る腕時計用キャリバー135など、傑作ムーブメントを開発。

1960年には、クロノグラフムーブメント製造メーカーのマーテルを買収し、その技術力をさらに高めました。

1969年に発表された自動巻きクロノグラフ「エル・プリメロ」は、ゼニスの名を世界に知らしめることとなりました。しかし、その直後に起こったクォーツショックにより経営危機に陥り、アメリカ企業であるアメリカン・ゼニス・ラジオに買収されます。機械式時計の製造停止、図面や金型の破棄命令が出される中、当時の技術者シャルル・ベルモは、命令に反して図面や金型を密かに保管し、ゼニスの技術の灯を消さないようにしました。

1978年、ゼニスはスイスの金融投資グループであるディキシーに買収され、スイス資本に復帰。機械式時計の製造を復活させました。その後は「エル・プリメロ」と「エリート」を搭載する時計を主力商品として展開。1999年にはLVMHグループの傘下に入り、現在に至ります。

2010年には、エル・プリメロを破棄の危機から救ったシャルル・ベルモの功績を称え、世界限定1975本の記念モデル「エル・プリメロ36000VpH・シャルル・ベルモ・トリビュート」が発売されました。

代表的なコレクション

エル・プリメロ (El Primero)
スペイン語で「No.1」を意味する「エル・プリメロ」は、36000振動/時のハイビート設計が特徴の自動巻クロノグラフ。1969年にゼニスとモバードが共同で開発した「Cal.3019 PHC」を搭載したのが始まりです。現在もゼニスの主力商品であり、高い精度と1/10秒の計測が可能なクロノグラフとして、多くのファンを魅了しています。

エリート (Elite)
1994年に開発された自動巻ムーブメント。エル・プリメロをベースにクロノグラフ機構を省略して再設計されたムーブメントです。シンプルで美しいデザインが特徴で、現行ではクラスやデファイの非クロノグラフ仕様に搭載されています。

デファイ (Defy)
革新的なデザインと最先端技術が融合したコレクション。高振動のクロノグラフやスケルトン文字盤など、ゼニスの挑戦的な姿勢を象徴するモデルが揃っています。

パイロット (Pilot)
ゼニスのルーツである航空計器のDNAを受け継ぐコレクション。視認性の高い文字盤や堅牢なケースなど、パイロットウォッチとしての実用性とデザイン性を兼ね備えています。

まとめ

ゼニスは、150年以上にわたり、革新的な技術と美しいデザインを追求し続けてきたスイスの時計ブランドです。自社一貫製造体制による高品質なムーブメント、そして数々の伝説的なコレクションは、世界中の時計愛好家から愛されています。

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