ゼロ (輸送会社)

株式会社ゼロ

株式会社ゼロは、主に自動車関連の物流サービスを提供する企業です。新車・中古車の販売会社への輸送や、中古車オークション会場の運営などを中核事業としており、自動車の流通過程を支える重要な役割を担っています。

設立と歴史的背景

株式会社ゼロの源流は、1961年に設立された「日産陸送株式会社」に遡ります。この会社は、その名の通り日産自動車グループの一員として発足しました。設立当初から、日産自動車が国内外で生産した完成車を各地の販売店へ輸送する業務を主要事業としていました。

しかし、事業の展開とともに、日産車以外の自動車メーカーからの輸送業務も受託するようになります。具体的には、韓国の現代自動車やドイツのBMWといった海外メーカーの車両輸送も手がけることで、徐々に日産自動車への事業依存度を下げる動きが見られました。

2000年代初頭、日産自動車は経営再建のために「日産リバイバルプラン」を策定し、グループ内の事業再編や子会社の整理を進めました。日産陸送もこの合理化の対象となり、グループからの離脱という選択肢が浮上します。そこで、当時の日産陸送の経営陣は、自社の株式を買い取るマネジメント・バイアウト（MBO）という手法を採用し、日産グループからの独立を果たしました。

この独立を新たな始まりと捉え、「ゼロからの出発」という強い意志を込めて、2001年に社名を「株式会社ゼロ」と改称しました。日産グループから離れた後も、日産車の完成車輸送業務は引き続き重要な事業として継続しており、長年にわたる実績と信頼に基づいた関係を保っています。

事業内容

主要事業である自動車輸送は、工場や港から販売店への新車（完成車）の配送が中心です。大型のキャリアカー（車両運搬車）を用いて効率的に車両を輸送する専門性の高いサービスを提供しています。輸送車両としては、かつて日産グループに属し、現在はにいすゞ自動車グループの一員であるUDトラックス社製の車両が多く用いられていますが、輸送ルートや積載効率などを考慮し、他メーカー製の車両も幅広く活用されています。

また、中古車の流通を支える事業として、自社で中古車オークション会場を運営しています。自動車販売業者などが参加するこのオークションを通じて、中古車の円滑な売買プラットフォームを提供しており、自動車関連の物流・流通サービスにおいて多角的な展開を図っています。

沿革

株式会社ゼロの主な歩みは以下の通りです。

1961年: 日産自動車グループの一員として「日産陸送株式会社」が設立される。
2001年: マネジメント・バイアウト（MBO）により日産グループから独立。「株式会社ゼロ」に商号を変更し、新たなスタートを切る。
2005年8月2日: 東京証券取引所市場第二部に株式を上場する。
2007年5月1日: 本社を神奈川県川崎市に移転。現在の本社所在地は、川崎駅近くのオフィスビル「ソリッドスクエア」内である。
* 2014年6月: シンガポールに拠点を置くTan Chong International Ltd.による株式公開買い付け（TOB）が成立し、同社の子会社となる。

その他

株式会社ゼロが日産グループから独立するまでの道のりや、独立後の挑戦については、日本の公共放送であるNHKのドキュメンタリー番組「NHKスペシャル」でも取り上げられ、そのエピソードが広く紹介されました。

かつて本社が置かれていた横浜市鶴見区の場所には、日産自動車の販売店が併設されており、毎年正月に行われる箱根駅伝のコース沿いに位置していたことでも知られています。しかし、旧本社ビルは耐震性の問題などもあり売却され、現在はマンションが建設されています。現在の本社機能は、2007年に移転した神奈川県川崎市のソリッドスクエア内に集約されています。

このように、株式会社ゼロは日産グループからの独立という歴史的な転換点を経て、自動車輸送と中古車オークション運営を核とした事業を展開し、自動車産業の物流・流通の一翼を担っています。

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