ゼントラーディ

ゼントラーディ

ゼントラーディ（Zentradi, Zjentohlauedy, Zentrady, Zentraedi）は、テレビアニメ『超時空要塞マクロス』およびその続編「マクロスシリーズ」に登場する架空の異星人。ゼントラーディ人とも呼ばれます。

概要

『超時空要塞マクロス』で地球人の敵として登場する、身長約10メートルの巨人型異星人です。古代星間文明の高度な遺伝子工学により、戦うために作られた種族とされています。強靭な肉体と高性能の兵器を持ちながら、男女は隔離され、歌や恋愛などの「文化」を全く知らず、敵対勢力である「監察軍」との戦争のみに明け暮れる存在です。戦いの中で文化を知ることで地球人との和解の道を選び、共存することになります。

地球人と同程度のサイズに縮小する「マイクローン化」という技術を持っています。髪や肌の色は地球人類とは違う緑や青などの色を持つ者もいますが、地球人類とほとんど見分けがつかない者もいます。

劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』では設定が変更され、ゼントラーディは男性の巨人族を指す呼称で、女性の巨人族「メルトランディ」と敵対関係にあるということになっています。

制作の過程

スタジオぬえにおいて『超時空要塞マクロス』の原型となるダミー企画が用意された際に、現実的には全く有効性のない全高10 - 20mの人型ロボット兵器を登場させるため、「ひと目見て、納得というか、あきらめてもらえる方法として」10 - 20mの巨人が敵とされました。スケールを大きくするため長きにわたり分裂戦争を繰り広げる銀河帝国級の異星人と設定されました。本命の企画がシリアスなものであったことの反動から、徹底してSFとしては非常識な要素が積み重ねられており、敵に関してもきわめて知能の低い異星人ということとなりました。敵異星人は「監察軍」と「枢軸軍（のちのゼントラーディ軍）」に分かれていることになり、監察軍による監視行動と艦長夫人との不倫を描くためにマイクローン・システムが設定され、枢軸軍にもこのシステムによりスパイ行動をさせ、映画や歌といった地球人の文化にあこがれる姿を馬鹿馬鹿しく表現することになります。その後、このダミー企画が本命となり、作風の変更や話数の削減にともない監察軍は登場しないことに決定され、枢軸軍は男女が隔離され文化を抑制された存在で、地球人とのファースト・コンタクトがキスシーンとなり、男女関係が文化の象徴として描かれることになります。

特徴

50万年前、銀河に一大星間文明を築き上げた知的生命体プロトカルチャーが、戦闘員として利用するために創造した人種です。容姿こそ地球人類と酷似していますが、その身長は人類の約5倍となっています。

出自および構成に関して、テレビ版と劇場版では一部設定が異なります。テレビ版ではゼントラーディ人の敵対勢力は監察軍で、ゼントラーディの男性と女性は同じ艦艇には乗っていないものの、同じ基幹艦隊の指揮下で活動。男性は白兵戦向けの強靭な肉体、女性はパイロットとして適した、小柄で高いGに耐えられるように作られています。劇場版では、プロトカルチャーが単性生殖を実現させた結果、男（ゼントラーディ）と女（メルトランディ）に分断され、戦争に至ったとされています。

反乱や謀反への安全対策として、知能も平均的な地球人の小学生レベルに限定され、戦闘のみに特化された種族のため、美術・音楽（歌）などの文化に免疫がなく、文化活動の場面に遭遇すると、激しく動揺したり興奮状態に陥ります。男女の恋愛行動に対しては、とくに異常な反応（カルチャーショック）を示します。

生殖能力はあるものの男女間の交流はほとんどなく、クローン技術により兵士が「製造」されています。また応用技術として、肉体を地球人サイズに縮小する「マイクローン化」や、逆にマイクローンを巨人サイズに戻すことができる「マイクローン装置」を所有しています。

ゼントラーディの歴史

ゼントラーディの誕生からプロトカルチャーの絶滅まで

『超時空要塞マクロス』時点の設定では、紀元前50万年代、銀河に一大星間国家を築き上げながらも、ゼントラーディ側と監察側に分裂して戦争を始めたプロトカルチャーが、戦闘用の兵器として巨人兵を作り上げ、叛乱を起こさないように知能を制限して文化を与えず男女を隔離し、攻撃対象を軍事施設等に限ったうえで、プロトカルチャーの非戦闘員への攻撃を禁じるプログラムを施し、戦争に投入するも、プロトカルチャーは激化する戦闘に巻き込まれ絶滅したとされています。

地球人類との接触と第一次星間大戦

1999年、監察軍の砲艦（のちのSDF-1 マクロス）が地球に落着します。2009年、これを追跡していたゼントラーディ軍のブリタイ艦隊が地球を訪れます。この時、マクロスのブービートラップが発動し主砲が自動的に発射され、地球人とゼントラーディは戦争状態に突入します。地球人類が失われた反応兵器を使用していることからブリタイ艦隊は全面攻撃を行わず、マクロスの捕獲および調査を行おうとします。

マクロス艦内に潜入したゼントラーディ兵は地球人類とのカルチャー・ギャップに大きな衝撃を受けます。特にアイドル歌手リン・ミンメイの歌声は多くのゼントラーディ兵に影響を与えます。ブリタイは上官である基幹艦隊司令長官ボドルザーに地球について報告しますが、ボドルザーは地球の文化を危険なものと見なし、殲滅しようとします。一方で、ブリタイ艦隊の中には地球人との和平を望む声が高まり、ボドル基幹艦隊対マクロス・ブリタイ艦隊の連合軍との決戦となります。マクロス・ブリタイの連合艦隊はリン・ミンメイの歌声を流し、カルチャーショックを誘ったうえで母艦内に突入し、ボドルザーを倒します。ボドルザーの配下だった艦隊はフォールド（超空間航行）して他の基幹艦隊に合流したものもいれば、地球人類と和平を結んだものもいます。

2010年4月、生き残った地球人類とゼントラーディによって「新統合政府」が樹立され、共存の道を歩み始めます。

第一次星間大戦後のゼントラーディ

テレビ版の第28話以降、および『マクロス7』などの続編では旧ブリタイ・アドクラス艦隊将兵の多くがマイクローン化して新統合政府に参加しており、新統合軍にも所属しています。地球人とゼントラーディ人のハーフやクォーターも数多く誕生しています。

第一次星間大戦でのボドル基幹艦隊による軌道爆撃により、人類の生存者は約100万人とされ、帰順したゼントラーディ人約800万人より少数となりました。このため以後の「地球人類」は、マイクローン化した帰化ゼントラーディ人の方が多いことになります。

『マクロスF』においては、大まかに元ブリタイ・アドクラス艦隊指揮下の帰化ゼントラーディ人と、元ボドル基幹艦隊指揮下の帰化ゼントラーディ人に分類され、前者のゼントラーディは比較的穏健派に属し、地球人類との共存共栄に積極的ですが、後者ゼントラーディは上位指揮系統の壊滅により否応なく人類に降伏、和平に応じた勢力であることから、新統合政府に反感を抱いて、反社会的なテロ活動を起こす者も存在するとされます。

身体的な特徴として、寒色系の肌の色が挙げられますが、地球人とさほど変わらない者も多いです。劇場版や『マクロスプラス』以降の続編では、旧シリーズにはなかった要素として、尖った耳が特徴として加わっています。

兵器としてプロトカルチャーにより文化的な思考能力を永く封印されていましたが、地球文化との接触によるカルチャーショックの結果、創造的な思考能力を取り戻します。

言語

プロトカルチャー言語から発展した独自の言語体系を使用しているようですが、テレビ版ではゼントラーディ人同士の会話も日本語で表現されており、地球人と会話する場面でも完全な翻訳機を使用し会話を成立させます。

劇場版においては、ゼントラーディ同士の会話は基本的にすべてゼントラーディ語で表現されます。

ゼントラーディ軍

ゼントラーディ人は種族全員が戦闘員であり、ゼントラーディ軍の将兵です。彼らには「民間人」（戦争をしない人間）という概念自体が存在せず、社会生活すべてが軍事行動と直結しています。

ゼントラーディ軍は1,000 - 2,000を超えるといわれる「基幹艦隊」に分かれて行動しています。1個基幹艦隊は移動司令部である超大型要塞と約500万隻の艦艇、そして搭載された無数の戦闘ポッドで構成されます。

兵器・技術

ゼントラーディ人は創造する能力を与えられておらず、運用している兵器類はすべてプロトカルチャーの作った無数の惑星や衛星の全自動兵器廠により製造されています。

役職・階級

ゼントラーディ軍ではマイクローン・システムの応用により、その役割に適した能力を特化した個体が製造されており、おもに量産性の高い「一般兵士タイプ」、戦闘能力が低い代わりに知能の高い「記録参謀タイプ」、真空中でも耐えられるほど強化された「指揮官タイプ」の三つに分けられます。

代表的なゼントラーディ人

純粋なゼントラーディ

ブリタイ・クリダニク
エキセドル・フォルモ
カムジン・クラヴシェラ
ミリア・ファリーナ
ボドルザー

ゼントラーディ系地球人

マクシミリアン・ジーナス
ガルド・ゴア・ボーマン
ランカ・リー
* ミラージュ・ファリーナ・ジーナス

ゼントラ

漫画『マクロス7 トラッシュ』などで「ゼントラ」という略称が用いられることがあり、『マクロスF』や関連媒体では「大きい」や「大盛り」の意味で用いることがあります（「ゼントラ盛り」「ゼントラ丼」など）。

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