ソウル・ステーション

ハンク・モブレー『ソウル・ステーション』

『ソウル・ステーション』は、名テナー・サックス奏者ハンク・モブレーのディスコグラフィーの中でも、間違いなく最も光彩を放つアルバムの一つです。ジャズ界の権威あるレーベル、ブルーノート・レコードから1960年にリリースされた本作は、カタログ番号BLP 4031として世に出ました。モブレーの代表作としては、本作に続いて発表された『ロール・コール』と共に、常に筆頭に挙げられます。

この歴史的な録音は、ニュージャージー州にあるルディ・ヴァン・ゲルダーの伝説的なスタジオで行われました。サウンドの根幹をなすのは、1950年代後半から60年代初頭にかけて全盛期を迎えたハード・バップのスタイルです。モブレーのテナー・サックスを中心としたタイトで推進力のあるアンサンブルが、このジャンルの魅力を余すところなく伝えています。

本作におけるモブレーの演奏を支えるのは、ジャズ史に名を刻む強力なカルテットです。ピアノにはウィントン・ケリー、ベースにはポール・チェンバースという、後にマイルス・デイヴィス・クインテットで不可欠なリズム隊を形成することになる二人が参加しています。そしてドラムスには、自身の率いるザ・ジャズ・メッセンジャーズで当時のジャズシーンを牽引していた巨匠アート・ブレイキーがクレジットされています。それぞれの楽器における第一人者が集結し、モブレーの洗練されたテナー・プレイを完璧にバックアップしています。彼らのスリリングかつ安定感のあるインタープレイは、このアルバムの大きな聴きどころの一つです。

収録曲の構成も見事です。アルバムの始まりと終わりには、ジャズ・スタンダードとして広く知られる名曲が配されています。オープニングは、アーヴィング・バーリン作曲の切ないメロディーを持つ「リメンバー」。そして、アルバムの最終トラックは、ラルフ・レインジャーとレオ・ロビンによる美しいバラード「イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー」です。これらの珠玉のスタンダードに挟まれる形で、モブレー自身が作曲した4曲が収録されています。特にタイトル曲「ソウル・ステーション」は、その名の通りソウルフルでブルージーな雰囲気を湛えた楽曲であり、一方「ジス・アイ・ディグ・オブ・ユー」は、アップテンポで躍動感あふれるハード・バップ・チューンです。これらのオリジナル曲は、プレイヤーとしてだけでなく、作曲家としてのモブレーの才能をも証明しています。

本作は、リリース以来高い評価を受け続け、ジャズ批評家やファンから絶賛されています。著名なジャズ評論家ボブ・ブルーメンソールは、ルディ・ヴァン・ゲルダー監修のCD盤に寄せたライナーノーツの中で、『ソウル・ステーション』をハンク・モブレーにとって、ソニー・ロリンズにとっての『サキソフォン・コロッスス』やジョン・コルトレーンにとっての『ジャイアント・ステップス』に匹敵する、キャリアを象徴する決定的な作品であると位置づけています。彼はさらに、この録音は「ブルーノート・レーベルはおろか、あらゆるレーベルから生み出された最も優れたプログラムの一つである」と最大級の賛辞を送っています。また、世界的な音楽レビューサイトAllMusicの評論家ステイシア・プロフロックは、このアルバムに最高の評価である星5つを与え、「総じて、このアルバムは、しばしば過小評価されがちなバップ時代の偉大なミュージシャンたちの一人によって創造された、まさに輝く星なのです」と評しています。これらの評価からも、本作が単なる優れたジャズ・アルバムではなく、ジャズ史において特別な光を放つ作品であることが伺えます。

この名盤の制作には、ブルーノートの共同創設者であり辣腕プロデューサーのアルフレッド・ライオンが携わりました。録音とミキシングは、前述の通りルディ・ヴァン・ゲルダーが担当し、その鮮明でパワフルなサウンドは今日のリスナーをも魅了し続けています。アルバムの視覚的なイメージを作り上げたのは、ブルーノートを象徴するアートワークの数々を手がけたスタッフです。カバー写真はフランシス・ウルフが撮影し、印象的なカバー・デザインはリード・マイルスが担当しました。

『ソウル・ステーション』は、ハンク・モブレーのテナー・サックス奏者としての円熟期を捉え、ハード・バップというジャンルの一つの理想形を示した金字塔です。豪華な顔ぶれのサイドメンによる隙のないサポート、スタンダードとオリジナルのバランス、そして最高の技術で記録されたサウンドは、発表から半世紀以上を経た現在も、全く色褪せることなく輝き続けています。ハンク・モブレー、そしてハード・バップを語る上で、決して避けて通ることのできない、まさに「ソウル・ステーション（魂の停車駅）」と呼ぶにふさわしい名盤中の名盤です。

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