ソニー HF

ソニーカセットテープ「HF」シリーズの歴史

ソニーの「HF」は、1970年から2015年まで、実に45年間にわたり販売された長寿のカセットテープブランドです。その間、様々な技術革新と市場ニーズに応えながら進化を続けました。本稿では、HFシリーズの歴史と各モデルの詳細について解説します。

初代HF (1970年 - 1978年)

1970年9月、ソニー初の音楽録音用ノーマルポジションカセットテープとして「Hi-Fi」の名称で登場しました。当時、TDKの「SD」やマクセルの「UD」といった競合製品に対抗するため、ヘマタイトを基本とした微粒子磁性体を採用。高密度均一分散により、ヒスノイズの低減を実現しました。また、磁性面の鏡面処理やハブ、ガイドローラーの高精度化により、テープ走行の安定性を向上させ、ドルビーBタイプNR搭載機での使用に最適化されていました。1972年4月には、「Hi-Fi」から「HF」へと正式名称が変更されました。1973年には初の全面改良が行われ、1978年に第2期シリーズへ移行するまで販売されました。

第2期HFシリーズ (1978年 - 1983年)

1978年、HFはAHF、BHF、CHF、JHFといった派生モデルへと発展・細分化され、一時的に「HF」の名称は休止となります。この時期は、カセットテープ市場の多様化に対応するため、各グレードごとに特化したモデルが展開されました。

3代目HF以降 (1983年 - 2010年, 2012年 - 2015年)

1983年9月、3代目HFが発売され、HFシリーズは復活しました。これは、従来のCHFの後継モデルであり、低級クラスのLH（Low-class Low Noise High-Output、LLH）グレードとして位置づけられました。透明なスリップシートのDPⅡメカやスモーク処理されたシースルーハーフが採用され、走行性能と組付精度が向上しています。音楽録音のほか、カラオケ、会話、語学録音にも対応したオールラウンドカセットとして販売されました。製造は日本以外に、タイ、アメリカ、フランス、韓国などでも行われました。

1990年代中期頃まではPケースやラウンドPケースが使用されていましたが、その後スリムケースに変更。販売末期にはOEM供給の関係でラウンドPケースに戻りました。

2012年からは日立マクセル（現・マクセル）の「UL」のOEM供給を受け、2015年3月まで販売されました。これは、2011年のタイ大洪水でソニーの磁気テープ工場が被災したことが大きな要因です。

派生製品

HFと同じテープを使用した派生製品として、A・la?46やGokkigen46!!などが存在していました。また、ソニーのラジオカセット、テレコ、カセットウォークマンのリファレンステープとしても使用されていました。

HF-S (1984年 - 1992年)

1984年1月、2代目BHFの後継として、音楽録音専用ノーマルポジションテープとして登場しました。超微粒子磁性体スーパークリスタルガンマを採用し、高音質を実現。1987年と1990年に改良が行われましたが、CDixIやX・Iに統合される形で1992年に販売終了となりました。

派生製品として、What's up?やWalkmanⅡなどが存在しました。

HF-X (1985年 - 1991年)

1985年10月、HF-SとHF-ESの中間を担う音楽録音専用ノーマルポジションテープとして発売されました。HF-Sと同等の磁性体を使用しながらも、バインダー充填密度を高めMOL特性を向上させています。当初はHF-Sとほぼ同価格でしたが、HF-Sのリニューアルに伴い、上位製品としての位置づけとなりました。1987年と1989年に改良が行われましたが、X・Iに吸収される形で1991年末に販売終了となりました。

派生製品として、EXISTが存在しました。

HF-ES (1984年 - 1991年)

1984年10月、2代目AHFの後継として、音楽録音専用高性能ノーマルポジションテープとして発売されました。高性能超微粒子磁性体シングルクリスタルガンマを採用し、ハイポジションテープに迫る性能を実現しました。1986年と1988年に改良が行われましたが、1991年5月に発売されたES・Iに吸収される形で販売終了となりました。

HF-Pro (1985年 - 1991年)

1985年2月、ノーマルポジションテープの最高級グレードとして発売されました。初代HF-ESをベースに、セラミックガイドを搭載して振動対策と変調ノイズ低減を図りました。価格はHFよりも高く設定され、高音質を求めるユーザーに支持されました。1986年と1988年に改良が行われましたが、HF-ES同様にES・Iに吸収される形で販売終了となりました。

HF II (1994年 - 1996年)

1994年9月、ハイポジションのボトムレンジを担う商品として登場しました。1978年以来のHFシリーズにおけるハイポジションテープとして注目されましたが、販売実績が伸び悩んだため、CDix2やGIG-2などに後を託す形で1996年3月に販売終了となりました。

まとめ

ソニーの「HF」シリーズは、長年にわたりカセットテープ市場を支えた名ブランドです。その間、様々な技術革新と市場ニーズに対応し、多くの人々に愛されました。各モデルの詳細は、オーディオファンにとって興味深い情報となるでしょう。

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