ハイポジション

ハイポジション（クロムポジション）カセットテープの詳細

ハイポジション、またはクロムポジションと呼ばれるカセットテープは、コンパクトカセットとエルカセットで使用される磁気テープの種類の1つです。コンパクトカセットではIEC TYPE II、エルカセットではTYPE IIIとして区別されます。ここでは特にコンパクトカセットのハイポジションについて詳しく解説します。

概要

ハイポジションカセットテープの歴史は、1970年春にドイツのBASFやアメリカのメモレックスが二酸化クロム磁性体を採用したテープを発売したことから始まりました。日本国内では、同年秋に東京電気化学工業（現TDK）が国産初のクロムポジション用カセットテープ「KR」を発売。翌年には日立マクセル、ソニーもそれぞれ「CHROME DIOXIDE」「CHROMI CASSETTE」として参入しました。初期のクロムテープは、その名の通り二酸化クロム磁性体を使用していましたが、毒性や環境問題、製造特許、ヘッド摩耗などの課題がありました。

1975年3月、TDKは二酸化クロムの代替としてコバルトドープ被着酸化鉄を使用したハイポジションカセットテープ「SA」を発売し、これが業界の標準となりました。しかし、2000年代に入ると、iPodなどの携帯型デジタルオーディオプレーヤーやスマートフォンの台頭により、ハイポジションを含む音楽録音用テープメディアは販売終了となりました。日本市場では、イメーション（TDK Life on Recordブランド）の「CDing2」が最後まで残っていましたが、2011年のタイ洪水で製造工場が被災し、生産を終了。これにより、ハイポジションカセットテープは市場から姿を消しました。

2022年現在、新品のハイポジションカセットテープは製造されていませんが、対応するカセットデッキやCDラジカセは依然として販売されています。一方で、北米のATR社はハイポジションカセットテープを製造・販売しています。大手メーカーの製品は入手困難ですが、リサイクルショップでは未使用品が見つかることもあります。特に、TDKの「SR-X/SA-X」やソニーの「UCX-S/UX-S/UX-PRO」、マクセルの「XLⅡ-S/響ハイポジ」などの人気モデルは高値で取引されています。廉価版のハイポジションテープも比較的高価格で取引されることがあります。

音質の特徴

ハイポジションカセットテープは、中低域に強いノーマルポジション（TYPE I）とは対照的に、中高域の録再特性に優れています。そのため、J-POP、ロック、ジャズ、フュージョンなどの音楽ジャンルに適しています。ただし、MOL特性（最大出力レベル）は、メタルポジション（TYPE IV）と比較して低く、高レベルで録音すると歪みやすいため、録音レベルの設定に注意が必要です。しかし、ハイポジションテープはヒスノイズ（再生時のホワイトノイズ）が少ないというメリットがあり、ノイズリダクションシステムを好まないユーザーにも支持されていました。

TDKの「SF」や「CDing2」、ソニーの「CDix II」や「HF II」、マクセルの「CD's」などは、比較的廉価なハイポジションテープであり、CD並みの高音質は期待できません。しかし、ソニーの「UX Master」は、カセットハーフの精度を高めた最高級モデルで、非常に高品質な音質と走行性能を実現していました。また、TDKの「SA-XG」も欧州市場向けに開発された最高級ハイポジションテープでした。さらに、太陽誘電（That's）やTDK、DENONは、メタルパウダーとコバルトイオンを組み合わせた複合磁性体を使用し、メタルポジションに匹敵する性能を持つハイポジションテープを開発していました。

使用上の注意点

ハイポジションカセットテープは、最大残留磁束密度や保磁力が比較的高いため、対応していないレコーダーで上書き録音すると、音が残ることがあります。特に、1970年に登場した初期のクロムテープは、オートテープセレクターがノーマルテープとして認識してしまう場合がありました。また、クロムテープは、柔らかいパーマロイヘッドを使用する旧型のカセットレコーダーで再生すると、ヘッドの摩耗を早める可能性がありました。

コバルトドープ磁性体を使用したハイポジションテープは、ノーマルポジション専用のレコーダーではトーンコントロール調整機能を使用することで再生可能です。しかし、1980年代初頭以前に発売された一部のラジカセでは、ハイポジションの録音に対応していない機種もありました。そのような機種では、ハイポジションテープは再生のみに対応し、録音はできません。ハイポジションに対応していないレコーダーで録音すると、フェリクロムポジションよりも高音が強調された音になります。

主なハイポジション（クロムポジション）カセットテープ一覧

以下に、主なハイポジションカセットテープのブランドとモデルを一覧で示します。(
※無印はコバルトドープ系磁性体、(M)は複合磁性体、＊は磁性体蒸着タイプ、#は二酸化クロム採用。")

TDK
KR#
SA
SA-X"
SA-XG" (日本未発売)
HX(M)
SF
CUE
SR
SR-X
CDing-II
Super CDing-II
CDing-II/Walker
SR-Limited
T2 (試作品)
DJ2
CDing2
AD Type-Ⅱ
AD2
BEAM2
NANA (セブンイレブン専売)
High Position (DS2、ダイソー専売)
日立マクセル
CHROME DIOXIDE#
CR#
UD-XLII
XLII
XLII-S"
UDII
UDII-U
UDII-S
UD2
Capsule-CologneII
GPXII
CD-CapsuleII
USII
CD'sII
CD-XLII
響ハイポジ (HB-2)
MY2
WE2
MusicGear2 (MG2)
ソニー
CHROMI CASSETTE#
CHROME CASSETTE#
CR#
JHF
Rock
UCX
UCX-S
Do
UX
UX-S
UX-Pro"
UX-Master"
CDixII
UX-Turbo
ES-II
X-II
HFII
G-UP2
GIG2
XSII
X-Tune2
FX-II
富士フイルム
FC#
Range4x
UR
FR-II
GT-II
PS-II
SD-Master"
PS-IIs
PS-IIx
GT-IIx
Hi
J'z2
AU-II
AU-IIx
BLACK SLIM II (BS2)
A2
A2 color
BOX2
PS2
K2
Z2"
Be2
HELLO KITTY (HK2)
日本コロムビア・DENON
CD#
5H#
DX7
DX8(M)
HD6
HD-S
HD
HD-X(M)
HD-L (Zippy-II)
HD-XS(M)
ZP-2
HG
HG-S
HG-X
CD/PAL-II
HG-M
K-RII
GX-II
GR-II
GR-IIS
C'Do2
太陽誘電 (That's)
EM(M)
EM-X(M)
EVEII(M)
EM-XP(M)
Q
CD-II
PHII
CD-IIS
OW-2
CD/IIF
H2
日本ビクター
CR#
VX
DA7
UF
UF-II
RZ-II
マグナックス・コニカ
GM II
EE
松下電器産業 (パナソニック)
CrO2 (RT-C)#
XA
XA II
EX
HA
Angrom DU
Angrom HG-DU
HA-X
HX
PXII
日立製作所・Lo-D
CX#
UD-EX
EX
SX
UDX
UD_X
CD_X
DJ-II
UD-E
CD-E
UD-v
ティアック
O-Casse/CT
Cobalt
Cobalt-X
パイオニア
C1
C1a
ナガオカ・ジュエルトーン
CR MUSIC
3M・Scotch
Chrome#
Master#
Master70μsEQ
Master II
XS-II
996X-II
BASF
Chromedioxide#
SCR#
ProII#
CR-X#
Chrome Super II#
ナカミチ
Chrome#
SX

脚注

この情報は、ハイポジション（クロムポジション）カセットテープの概要、歴史、音質、使用上の注意点、および主な製品一覧をまとめたものです。詳細については、各メーカーの公式情報や専門資料をご参照ください。

関連項目

コンパクトカセット
デジタルコンパクトカセット（DCC）
ノーマルポジション
フェリクロムポジション
メタルポジション
エルカセット
EEポジション (オープンリールオーディオテープ)

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