ソフィーヤ・ロタール

ソフィーヤ・ロタール：歌姫の軌跡

ソフィーヤ・ムィハーイリウナ・ロタール（1947年8月7日生まれ）は、ルーマニア系ウクライナ出身の歌手であり、その才能と美貌で、ソ連時代から現代に至るまで、幅広い世代に愛され続けている国民的歌手です。

生い立ちと音楽への目覚め

彼女は、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国の北ブコヴィナ地方、チェルニウツィー州のマルシンツィ村で生まれました。この地域は歴史的にルーマニアやモルドヴァとの繋がりが深く、彼女の一家もモルドヴァ系の血を引いています。歌の村として知られるマルシンツィで育ち、両親もまた、その村で指折りの美声の持ち主でした。姉のジナイーダは幼少期の病で視力を失いましたが、優れた音感と記憶力で多くの民謡を覚え、幼いソフィーヤに歌を教えました。

幼い頃から歌うことが好きだったソフィーヤは、教会の合唱団に所属し、青年時代には演劇サークルや民謡のアマチュア歌手として活動しました。スポーツにも才能を発揮し、州大会で優勝するほどの腕前でした。1962年、地区のアマチュア芸術家コンクールで優勝したことをきっかけに、彼女の歌声は「ブコヴィナの小夜鳴鳥」として地域の人々に知られるようになりました。

歌手としての飛躍

1964年、共和国人民芸能フェスティバルで優勝を果たし、雑誌の表紙を飾ったことがきっかけとなり、歌手になることを決意します。チェルニウツィー音楽学院に入学し、指揮・合唱科で学びながら、モスクワのクレムリン宮殿で初めて舞台に立ちました。音楽学院在学中には、後の夫となるアナトーリイ・エヴドキーメンコと出会い、彼の楽団に参加したことが、彼女の音楽キャリアを大きく飛躍させるきっかけとなりました。1968年には、ブルガリアのソフィアで開催された第9回全世界青年・学生フェスティバルで金メダルを獲得し、国際的な評価を得ました。

結婚と音楽活動の両立

アナトーリイと結婚後も、ソフィーヤは音楽活動を続けました。1971年には、ミュージカル映画『チェルヴォーナ・ルータ』で主役を務め、この映画は大成功を収めました。その後、自身の楽団「チェルヴォーナ・ルータ」を結成し、夫が楽団長として彼女を支えました。1972年には、テレビ・コンクールで優勝し、国内フェスティバルでも入賞するなど、その人気は不動のものとなりました。

苦難の時代と新たな挑戦

しかし、1976年にキリスト教の祝日を祝ったことがきっかけで迫害を受け、長年暮らしたチェルニウツィーからクリミア半島へ移住を余儀なくされました。さらに、彼女の才能を高く評価していた作曲家のヴォロドィームィル・イヴァスュークが不慮の死を遂げ、彼女の音楽活動は大きな打撃を受けました。ソ連崩壊後、音楽業界の商業化が進む中で、彼女は以前のような主導的な立場を失いましたが、固定ファン層の支持を受け、ウクライナでは若い世代からも支持されています。

現代におけるソフィーヤ・ロタール

近年では、両親や夫との死別など、私生活での苦難も経験しましたが、2003年に活動を再開し、新曲を発表し続けています。ウクライナ議会の選挙に立候補するなど、政治活動にも参加しました。ソ連時代から現代に至るまで、400以上の歌を世に送り出し、その多くがウクライナを代表する歌となっています。現在も、コンサートやテレビ番組に出演し、その美しい歌声とスタイルで多くの人々を魅了し続けています。

ソフィーヤ・ロタールは、音楽を通じて人々に感動と希望を与え続ける、まさに国民的歌姫と言えるでしょう。

1947年8月7日、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国チェルニウツィー州に生まれる。
1963年、ブルガリアのソフィアで開催された第9回全世界青年・学生フェスティバルで優勝。
1964年 - 1968年、チェルニウツィー音楽学院指揮・合唱科に学ぶ。
1971年、初の主演映画『チェルヴォーナ・ルータ』が成功。
1973年、ウクライナ功労芸術家に叙せられる。
1974年、ポーランドのソポトで開催されたフェスティバル「琥珀の小夜鳴鳥」で優勝。
* 1988年、ソ連人民芸術家に叙せられる。

もう一度検索