ソマリアの行政区画

ソマリアの行政区分と現状

ソマリアは、6つの連邦構成国と首都地域からなる連邦国家ですが、1991年からの内戦により、連邦政府が全国を統治できていない状況が続いています。この記事では、ソマリアの行政区分と、それぞれの地域が抱える問題について詳しく解説します。

ソマリアの概要

ソマリアの住民の多くはソマリ族であり、5つの主要な氏族に分かれています。これらの氏族は、さらに細かい支族に分かれており、それぞれが特定の地域にまとまって暮らしています。1991年の中央政府崩壊後、氏族が事実上の行政単位となり、氏族間の対立が内戦の主な原因となりました。

ソマリアは1960年にイギリス領ソマリランドとイタリア領ソマリランドが合併して成立しました。しかし、1969年の軍事クーデターにより、モハメド・シアド・バーレが大統領となり、独裁政治を始めます。バーレは出身氏族を優遇したため、他の氏族の不満が高まり、1986年に反乱が勃発。中央政府は地方の支配力を失い、1991年にはバーレ政権が崩壊し、ソマリアは無政府状態の内戦に突入しました。

連邦政府の成立と課題

国際社会の支援により、ソマリア暫定国民政府（2000年 - 2004年）が成立しましたが、中央集権的な体制を志向したため、各氏族の支持を得られませんでした。その後、ソマリア暫定連邦政府（2004年 - 2012年）が連邦制を採用し、対立していた氏族や勢力との和解を進めました。2012年8月には、国際的に承認された中央政府としてソマリア連邦政府が成立し、プントランドやガルムドゥグといった自治国が構成国として連邦に加入しました。

しかし、ソマリランドは依然としてソマリアへの帰属を拒否しており、他の構成国も氏族間の問題やイスラム武装勢力の活動といった不安要素を抱えています。また、連邦政府と構成国の関係も必ずしも良好ではなく、政治的な対立が再燃する可能性もあります。

現在の行政区分

ソマリアの行政区画は、連邦政府と連邦の構成国（自治政府、地方政府）の2層構造となっています。連邦構成国の数と境界は憲法で定められておらず、連邦議会に委ねられています。現在、ソマリアには6つの構成国と首都地域が存在します。

各構成国の概要

ソマリランド: 1991年にソマリアからの独立を宣言し、事実上の独立国家として機能していますが、国際的には承認されていません。
バナディール首都地域（モガディシュ）: ソマリア連邦共和国の大統領府や議会が置かれていますが、治安が不安定な状況が続いています。
プントランド: ソマリ族のダロッド氏族が中心となって1998年に設立された自治国で、比較的安定していますが、ソマリア沖の海賊の拠点となっている地域も存在します。
ガルムドゥグ: ソマリ族のハウィエ氏族が2006年に設立した自治国で、プントランドとの領土問題を抱えています。
ヒーシェベリ: 旧ヒーラーン地域と中部シェベリ地域からなる、2016年に設立された新しい構成国です。
南西ソマリア: ソマリ族のラハンウェイン氏族が主に住む自治国で、イスラム法廷連合との対立を経て、2014年に再建されました。
ジュバランド: ダロッド、シェークハール、ラハンウェインなど、多様な氏族が居住する地域で、2013年に自治政府が設立されました。

イスラム過激派組織

ソマリア南部を中心に、イスラム主義を掲げる武装組織が活動しています。これらの組織はソマリア政府と敵対しており、一部の国ではテロ組織として認定されています。

イスラム法廷連合: 1994年に結成され、イスラムによるソマリアの再統一を掲げましたが、2006年に内部分裂を起こし衰退しました。
アル・シャバブ: イスラム法廷会議の一部の過激派が結成した組織で、シャリーアによる厳格な法体系を支配地域に適用しています。
ヒズブル・イスラム: 2009年に結成され、ソマリア南部で活動していましたが、2010年にアル・シャバブに降伏しました。

内戦前の行政区画

1991年1月のバーレ政権崩壊前のソマリアは、18の地域（州）と89の地区（県）に区分されていました。これらの行政区画は、現在でも国際機関などが地域区分として使用しています。

ソマリアの課題と将来

ソマリアは、内戦、氏族間の対立、イスラム武装勢力の活動など、多くの課題を抱えています。連邦政府は、これらの課題を克服し、全国の統一と安定を実現するために、さまざまな取り組みを進めています。しかし、ソマリアの将来は依然として不確実であり、国際社会の支援が不可欠です。

もう一度検索