ソユーズ12号

1971年、ソユーズ11号ミッション中に発生した痛ましい事故は、ソビエト連邦の有人宇宙計画に大きな教訓をもたらしました。この悲劇的な出来事の後、ソ連当局は今後の有人宇宙飛行における安全対策の抜本的な見直しを迫られます。ソユーズ12号は、この教訓を反映し、乗組員の安全確保を最優先に再設計された新型ソユーズ宇宙船、ソユーズ7K-T型の初の有人試験飛行として、1973年に実施されました。これは、ソユーズ11号事故以降、中断されていたソビエト連邦の有人宇宙飛行が再び軌道に乗ったことを示す重要なミッションでした。

安全性の向上と乗員構成

新型ソユーズ7K-T宇宙船における最も顕著な変更点は、宇宙飛行士の安全性を高めるための改良です。特に、打ち上げ時、宇宙空間での活動中、そして地球への帰還時には、乗組員が常時、加圧可能な「ソコル宇宙服」を着用することが義務付けられました。これは、1961年のボストーク2号以来、およそ12年ぶりにソ連の有人宇宙船で加圧宇宙服が標準装備となったことを意味します。宇宙服の着用は船内の容積と重量に制約をもたらし、これにより乗組員数は従来の3名から2名へと削減されました。ソユーズ12号に搭乗した宇宙飛行士は、船長ワシリー・ラザレフとフライトエンジニアのオレグ・マカロフの2名でした。彼らにとって、この飛行は初めての宇宙体験となりました。バックアップクルーにはアレクセイ・グバレフとゲオルギー・グレチコ、リザーブクルーにはピョートル・クリムクとヴィタリー・セバスチャノフが控えていました。

ミッション詳細

ソユーズ12号は、1973年9月27日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から順調に打ち上げられました。宇宙船の質量は6,720 kgで、初期軌道は近点306 km、遠点348 km、軌道傾斜角51.0度、軌道周期91.0分でした。

当初の計画では、サリュート宇宙ステーションとのドッキング試験も含まれる予定でしたが、打ち上げの数ヶ月前に軌道上にあった関連ステーション、サリュート2号およびコスモス557号が相次いで不具合を起こし、ドッキング可能な宇宙ステーションが存在しない状況でした。また、ソユーズ7K-T型のサービスモジュールは太陽電池パネルを備えておらず、内蔵バッテリーのみで運用されたため、宇宙ステーションへの往復を想定した約2日分の電力しか供給できませんでした。このため、ミッションは宇宙船自体の基本性能、特に新しい安全システムの確認と、限られた範囲での地球観測に重点が置かれました。

軌道上での2日間、ラザレフとマカロフ両宇宙飛行士は、新型宇宙船のシステムが設計通りに機能するかを綿密に点検しました。ミッション2日目には軌道マヌーバを実施し、326×344 kmの新しい軌道に入りました。この軌道は、後に成功を収めたサリュート4号宇宙ステーションの標準的な運用軌道として採用されることになります。

また、軌道モジュールに搭載されたマルチスペクトルカメラを用いた地球観測も行われました。これは主に、広大な範囲にわたる穀物や森林などの植生の状態を調査することを目的としていたと報告されています。さらに、当時の通信衛星「モルニヤ1」の通信可能範囲外にある地上局との通信試験も試みられました。

帰還と成果

2日間のミッションを無事に終え、ソユーズ12号は1973年9月29日に地球へ帰還しました。着陸地点はカザフスタンのカラガンダ南西約400kmの地点でした。帰還モジュールが大気圏再突入前にサービスモジュールから分離される際、逆推進ロケットの点火とほぼ同時に、大きな物体が宇宙船から投棄されるのが観測されました。この物体はその後116日間軌道上に留まった後、別の地点に落下しました。

ミッション全体は、新型ソユーズ7K-T宇宙船の飛行性能と、安全対策として導入された加圧宇宙服の有効性を示すことに成功し、「完璧」なミッションであったと公式に評価されました。ソユーズ12号の成功は、ソユーズ11号事故からの回復と、ソビエト連邦の有人宇宙開発計画が再び力強く前進し始めたことを示す歴史的な一歩となりました。

もう一度検索