ソユーズ31号

概要

ソユーズ31号（Soyuz 31）は、1978年に旧ソビエト連邦によって実施された有人宇宙飛行ミッションです。このミッションの目的は、軌道上にあった宇宙ステーション「サリュート6号」を訪れることでした。サリュート6号を目指す飛行としてはこれが7度目にあたり、ステーションとのドッキング成功はこれで6回目を数えました。当時サリュート6号に長期滞在していたソユーズ29号のクルーにとっては、彼らを訪れる宇宙船としては2回目の到着となりました。

乗組員

ソユーズ31号に搭乗した乗組員は、打上げ時と帰還時で異なります。

打上げ時

船長：ヴァレリー・ブィコフスキー
フライトエンジニア：ジークムント・イェーン

特筆すべきは、フライトエンジニアとして搭乗したジークムント・イェーンが、東ドイツ（ドイツ民主共和国）出身者として初めて宇宙へ行った人物であり、東西ドイツを通じて初のドイツ人宇宙飛行士となった点です。

帰還時

ソユーズ31号の最大の目的の一つであった機体交換のため、帰還時の乗組員はサリュート6号に長期滞在していたクルーとなりました。

船長：ウラジーミル・コワリョーノク
フライトエンジニア：アレクサンドル・イワンチェンコフ

バックアップ

計画段階で搭乗が検討されていたバックアップクルーは以下の通りでした。

船長：ヴィクトル・ゴルバトコ
フライトエンジニア：エベルハルト・ケルナー

ミッション詳細

ソユーズ31号は、国際的な宇宙協力プログラムであるインターコスモス計画の一部として実施された3度目の飛行ミッションでした。1978年8月26日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたソユーズ31号は、その翌日には無事、サリュート6号の後方ドッキングポートへの接続を完了しました。ドッキング後、ブィコフスキー飛行士とイェーン飛行士は、すでにサリュート6号に滞在していたコワリョーノク飛行士とイワンチェンコフ飛行士と合流しました。彼らは長期滞在中の宇宙飛行士のために、新鮮なタマネギやニンニク、レモン、リンゴといった食料品を含む、様々な物資を運び込みました。

科学実験と活動

サリュート6号への滞在中、ソユーズ31号のクルーは多岐にわたる科学実験や技術試験を実施しました。

地球観測: ドイツのカール・ツァイス社が製造した多スペクトルカメラMKF-6Mが宇宙ステーションに設置され、特にイェーン飛行士による様々な観測作業が実施されました。
医学・生物学実験: 宇宙環境下における人間の生体反応を調べる実験も行われました。これには、音声や雑音といった刺激に対する人間の受容限度を測定する試験などが含まれていました。
材料科学実験（Berolina実験）: 「ベロリーナ（Berolina）」と名付けられたこの実験では、小型の溶鉱炉を用いて材料加工が試みられました。具体的には、ビスマスとアンチモンでできたアンプル内に設置された2枚の板の間で物質を結晶化させるというものです。その結果、生成された樹状構造は、地上で作製されたものと比較して4倍から6倍もの大きさに成長することが確認されました。これは、微小重力環境が材料の結晶成長に大きな影響を与えることを示す重要な成果でした。
写真技術試験: 異なる種類の写真フィルムを使用して、宇宙ステーションの内部空間を撮影する試験も実施されました。これは、宇宙空間での写真撮影技術の評価や改善に貢献するものでした。

機体交換と帰還

ソユーズ31号ミッションの重要な目的の一つは、サリュート6号に長期滞在しているクルーに対して、新鮮なソユーズ宇宙船を供給することでした。これは、宇宙船の寿命や信頼性に関する懸念に対処するため、あるいは万が一の際の緊急脱出手段として、常に状態の良い機体を確保しておくための措置でした。

ブィコフスキー飛行士とイェーン飛行士は、サリュート6号にドッキングしていたソユーズ29号と自身が搭乗してきたソユーズ31号の機体を交換する作業を進めました。交換に先立ち、9月2日にはソユーズ29号のエンジンの試験が行われ、宇宙ステーションで実施された100に及ぶ実験の結果を記録した感光フィルムや、25個の実験容器がソユーズ29号へ移されました。その後、宇宙飛行士たちの座席も新しい機体へと載せ替えられました。

これらの準備が完了した後、ヴァレリー・ブィコフスキー飛行士とジークムント・イェーン飛行士は、サリュート6号に到着したソユーズ31号ではなく、彼らが持ち帰る役割を担うことになったソユーズ29号に乗り込みました。ソユーズ29号は翌日の9月3日にサリュート6号から分離し、地球へと帰還しました。着陸地点はカザフスタンのジェズカズガン南東約140kmの地点でした。

一方、サリュート6号に滞在を続けたウラジーミル・コワリョーノク飛行士とアレクサンドル・イワンチェンコフ飛行士は、ソユーズ31号を後方ドッキングポートから分離し、ステーションの前方ポートへ移動させる操作を行いました。これは、後方ポートをプログレス補給船がドッキングできるよう空けるためです。彼らはその後もソユーズ31号を脱出船として利用しながら長期滞在を続け、最終的に139日という当時の宇宙滞在最長記録を樹立しました。彼らは1978年11月2日に、ソユーズ31号に搭乗して地球へ無事帰還しました。

パラメータ

質量: 6,800 kg
近点高度: 196.8 km
遠点高度: 259.9 km
軌道傾斜角: 51.64度
* 軌道周期: 88.81分

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