ソユーズ5号

ソユーズ5号は、1969年1月15日に旧ソビエト連邦が打ち上げた有人宇宙船です。その名前「ソユーズ」はロシア語で「団結」や「統合」を意味しており、このミッションの目的を象徴するかのようでした。全長にわたる技術的詳細としては、質量が6,585kgあり、軌道は近地点196km、遠地点212kmで、軌道傾斜角は51.7°、おおよそ88.6分で地球を一周しました。

この宇宙飛行計画の主要な目標は、既に軌道上にあったソユーズ4号とのランデブーおよびドッキング、そして歴史上初めての宇宙空間での有人宇宙船間における搭乗員の移動でした。また、宇宙船のシステムや設計の検証、複雑な操縦を伴うドッキング操作、さらには軌道上での科学、技術、医療に関する様々な研究も含まれていました。ソユーズ5号には、船長のボリス・ボリノフ飛行士、そして航空機関士のアレクセイ・エリセーエフ、エフゲニー・フルノフ両飛行士が搭乗しました。計画通り、エリセーエフとフルノフの両飛行士は、ドッキング後に4号へと移動し、そこで大気圏再突入を行うことになっていました。

宇宙開発史に残る偉業は、1969年1月16日に達成されました。ソユーズ5号はソユーズ4号とのドッキングに成功し、これをもって史上初の有人宇宙船同士による軌道上での結合が実現しました。その後、エリセーエフ飛行士とフルノフ飛行士は、ヤストレブ（ロシア語で「鷹」）と呼ばれる宇宙服を装着し、船外活動（EVA）を通じて4号へ移動しました。この船外活動はUTCで12時43分00秒に開始され、13時15分に終了するまでの37分間行われました。ヤストレブ宇宙服は、ボスホート2号でのアレクセイ・レオーノフ飛行士による最初の船外活動時に明らかになった技術的問題を克服するため改良されたもので、関節部に独特な滑車とケーブルを備えていました。モスクワテレビでは、彼らが船内で宇宙服を着る様子が生中継され、タス通信はこのドッキング成功を「相互に機能する宇宙船が誕生した」「搭乗員のための四つの区画を持つ実験的な宇宙ステーションが組み立てられ、機能を開始した」と報じました。二人は4号へ移動した後、シャタロフ船長に新聞や手紙などを手渡し、宇宙空間での乗り移りが完全に成功したことを証明しました。

一方、ソユーズ5号に一人残されたボリノフ飛行士は、帰還時に極めて深刻な事態に直面することになります。大気圏再突入の際、通常は球形の軌道船、逆噴射後の機械船が順次分離され、耐熱板のある司令船のみが帰還する設計です。しかし、この時、逆噴射を終えたにもかかわらず、機械船が司令船から分離しませんでした。これは過去のボストークやボスホートでも見られた現象ですが、ソユーズの機械船はそれらよりも遥かに大きかったため、結合したままでは空気力学的に極めて不安定であり、耐熱板のない機首部分が先に大気圏に突入し、機体が分解する危険性がありました。

最悪のシナリオは現実のものとなります。大気圏上層で空気抵抗が効き始めると、機体は不安定なまま機首を前方に向ける姿勢をとり始めました。司令船のハッチが直接高熱の気流に晒され、気密シールの溶融により有毒ガスが船内に充満しました。ボリノフ飛行士は、通常の再突入姿勢とは逆向きに、シートベルトで座席から宙吊りになるような体勢を強いられました。しかし、幸運なことに、大気圏突入時の激しい熱によって機械船との結合部が破壊され、機械船が分離しました。これにより司令船は耐熱板を前方に向ける正規の姿勢に戻り、ハッチの損傷を免れました。

司令船はパラシュートを開きましたが、そのひもが絡まり、さらに着陸直前の減速用ロケットも点火しませんでした。このため、着陸時の衝撃は非常に激しいものとなり、ボリノフ飛行士は歯を折る怪我を負いました。着陸地点は予定されていたカザフスタンの基地から大幅にずれ、極寒のウラル山脈山中、オレンブルク近郊のクスタニから南西2kmの地点でした。外気温がマイナス38℃という過酷な状況下で、救助隊の到着まで数時間かかることを悟ったボリノフ飛行士は、自力でカプセルから脱出し、数キロ歩いて発見した近くの農家に避難し、九死に一生を得ました。

ソユーズ5号の帰還事故は、宇宙飛行がいかに危険と隣り合わせであるかを改めて示す出来事となりました。後年、2008年のソユーズTMA-11でも同様の機械船分離失敗が発生しましたが、その際の着陸衝撃は5号ほどではなかったとされています。この壮絶な経験から7年後の1976年、ボリノフ飛行士はソユーズ21号で再び宇宙への旅を果たしました。ソユーズ5号のミッションは、宇宙空間での高度な技術達成と同時に、予期せぬ事故のリスクと、それを乗り越えた飛行士の不屈の精神を伝える歴史的な事例として記憶されています。

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