ソユーズTM-25

ソユーズTM-25 (Soyuz TM-25)

ソユーズTM-25は、当時のロシア連邦が運用していた軌道上宇宙ステーション「ミール」への人員交代及び物資輸送を目的とした、ロシア連邦宇宙局（Roscosmos）による有人宇宙飛行ミッションです。ソユーズ宇宙船を用いたミールへの有人輸送としては通算30回目にあたる、節目とも言える飛行でした。本ミッションに割り当てられたコールサインは「シーリウス」です。

この飛行は、ロシアの宇宙開発プログラムの一環として位置づけられると同時に、国際協力の側面も持ち合わせていました。特に、欧州宇宙機関（ESA）からドイツ連邦共和国所属の宇宙飛行士がクルーの一員として参加したことは、当時の宇宙開発における国際連携の広がりを示す事例の一つです。

打ち上げ

ソユーズTM-25ミッションは、1997年2月10日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、ロシア製のソユーズ-Uロケットを用いて打ち上げられました。このソユーズ-Uロケットは、長年にわたり数多くのミッションを成功させてきた実績ある信頼性の高い打ち上げシステムです。計画通り、ロケットは宇宙船を正確に軌道に乗せ、ミール宇宙ステーションへのランデブー軌道投入に成功しました。

ミールとのドッキング

打ち上げから約2日後、ソユーズTM-25宇宙船は宇宙ステーション「ミール」への接近を開始しました。ドッキングは1997年2月12日の協定世界時（UTC）15時51分に実施されました。宇宙船がミールへ最終的に結合する際には、通常、自動ドッキングシステムが用いられます。

しかし、ソユーズTM-25のドッキングプロセスにおいては、ミールへの残り数メートルという最終段階に至って、自動操縦システムによる照準にわずかながら不整合が生じるという予期せぬ事態が発生しました。宇宙空間でのドッキング作業は、わずかなずれも大きな危険につながる可能性があります。

これに対し、ソユーズTM-25の船長は冷静かつ迅速な判断を下しました。即座に自動操縦から手動操縦へと切り替え、自らの高度な操縦技術を駆使して、宇宙ステーションのポートへ宇宙船を正確に誘導しました。この手動操作によって、ドッキングは無事成功裏に完了し、ソユーズTM-25は安全にミールと結合することができました。この出来事は、宇宙飛行における自動化技術の重要性と同時に、万が一の事態に対応できる熟練した宇宙飛行士の存在がいかに不可欠であるかを改めて示すものとなりました。

乗組員

ソユーズTM-25ミッションの乗組員構成は以下の通りでした。

打ち上げ時クルー:

ワシリー・ツィブリエフ (Vasily Tsibliyev) - ロシア (2回目の宇宙飛行)
アレクサンドル・ラズトキン (Aleksandr Lazutkin) - ロシア (1回目の宇宙飛行)
ラインホルト・エヴァルト (Reinhold Ewald) - ドイツ (1回目の宇宙飛行)

ワシリー・ツィブリエフ氏は経験豊富な船長として、アレクサンドル・ラズトキン氏はフライトエンジニアとして搭乗しました。そして、欧州宇宙機関所属のラインホルト・エヴァルト氏は、研究ミッションを担当する宇宙飛行士として加わりました。彼の参加は、ロシアと欧州の宇宙協力の進展を象徴するものでした。

ミールからの帰還時クルー:

ワシリー・ツィブリエフ (Vasily Tsibliyev) - ロシア
* アレクサンドル・ラズトキン (Aleksandr Lazutkin) - ロシア

（注：ラインホルト・エヴァルト氏は、このミッションでソユーズTM-25と共にミールに到着した後、他のソユーズ宇宙船またはミール滞在中の別の宇宙船で地球へ帰還したものと考えられます。ソユーズTM-25は、ワシリー・ツィブリエフ氏とアレクサンドル・ラズトキン氏を乗せてミールから離脱し、帰還しました。）

このミッションは、ミール宇宙ステーションへの定常的な人員交代と継続的な運用維持に貢献するとともに、国際的な研究機会を提供した重要なフライトでした。

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