ソリドゥス金貨

ソリドゥス金貨：古代ローマ・東ローマ帝国の基軸通貨

ソリドゥス金貨は、4世紀にローマ皇帝コンスタンティヌス1世によって導入された金貨であり、東ローマ帝国では「ノミスマ」と呼ばれていました。その高い品質と安定性から、長きにわたり経済の基盤を支え、「中世のドル」として広く流通しました。

ソリドゥス金貨の誕生

3世紀のローマ帝国は、政治・経済の混乱期にありました。ディオクレティアヌス帝の改革により政治は安定したものの、経済的な問題は依然として残っていました。このような状況下で、コンスタンティヌス1世は通貨の安定化を目指し、ソリドゥス金貨を鋳造しました。この金貨は4.48グラムの金を含有し、純度は95.8%と非常に高いものでした。

東ローマ帝国におけるソリドゥス金貨（ノミスマ）

ソリドゥス金貨は、東ローマ帝国においても重要な役割を果たしました。ユスティニアヌス1世の時代に編纂された『ローマ法大全』には、金貨に関する規定が数多く盛り込まれており、その重要性がうかがえます。歴代の皇帝は金貨の重量と純度を厳格に維持し、その信頼性を高めました。

7世紀に東ローマ帝国のシリア・エジプトがイスラーム勢力に征服された後も、ノミスマはしばらくの間流通しました。コンスタンティノープルは経済の中心地として繁栄し、ノミスマは貨幣経済を支える重要な役割を果たし続けました。

ソリドゥス金貨の衰退

しかし、11世紀後半頃から、ソリドゥス金貨の純度が低下し始め、その信頼性が揺らぎ始めました。特に、1071年のマンツィケルトの戦いでセルジューク朝に敗北した後、金貨の純度は50%を下回るまでに低下しました。

純度低下の原因については、コンスタンティノス8世以降の皇帝による国庫の浪費、11世紀以降のヨーロッパにおける経済成長に伴う金不足などが指摘されていますが、明確な結論は出ていません。

品質と価値の低下が進み、1092年にアレクシオス1世によって通貨制度が改革され、ヒュペルピュロン金貨に切り替えられました。

ソリドゥス金貨の影響

ソリドゥス金貨は、その名前が示すように、各地の通貨に影響を与えました。中世フランスのソル、イタリアのソルド、スペインのスエルドなどは、ソリドゥスに由来しています。現在でもペルーでは、ヌエボ・ソルという通貨が使用されています。

また、ドル記号「$」の起源もソリドゥス金貨にあるとされています。

古代ローマ時代には、兵士の給与として塩が支払われていましたが、ソリドゥス金貨の導入により、塩と同額の金貨で支払われるようになりました。

ソリドゥス金貨は、古代から中世にかけての経済史において、非常に重要な役割を果たした通貨と言えるでしょう。

もう一度検索